会員サイトはSaaSが向かない?構築方法で迷わないための考え方(SaaS/パッケージ/スクラッチの選び方)
会員サイトを構築するときは、「SaaS」「パッケージ」「スクラッチ」のどれを選ぶべきか迷いやすくなります。会員ごとの体験や運用ルール、外部システムとの連携まで考える必要があるためです。
本記事では、SaaS/パッケージ/スクラッチの選び方を、会員サイトの「差別化したい領域」という視点から整理します。
目次
なぜ会員サイトは構築方法で迷うのか
会員サイトの構築方法で迷うのは、判断材料が足りないというより、何から比較すればよいかが分かりにくいからです。
会員サイトは、単にログインやマイページを用意するだけでは成果につながりにくいです。むしろ重要になるのは、次の3つです。
- 体験:登録導線、会員ランク、コンテンツの出し分け、ユーザーインターフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)
- 運用:権限、管理画面、問い合わせ対応、更新フロー、例外処理
- 拡張:顧客関係管理(CRM)/マーケティングオートメーション(MA)・決済・基幹などの連携、施策改善(A/B等)、将来追加
この3つが絡むので、機能比較から入ると判断しづらくなりがちです。
そこでこの記事では、会員サイトで迷わないための構築方法の選び方を、現場で使えるフレームとして整理します。
構築方法は「差別化領域」で決める
SaaSが良い/スクラッチが良い、という二択に落とすと必ず迷います。
会員サイトの構築方法を選ぶときに大切なのは、もっとシンプルな結論です。
構築方法は「差別化したい領域」で決める
- 標準でよい領域:なるべく早く、安く、安定して作る
- 差別化する領域:自由度と拡張性を優先して作る
会員サイトは作って終わりではなく、運用しながら育てます。だから「後から変える」箇所ほど、自由度が重要になります。
この「後から変える部分」がどこかを先に決めれば、構築方法はかなり決めやすくなります。
会員サイトが「標準化しにくい」3つの理由
会員サイトが構築方法で迷いやすいのは、標準化しづらいからです。理由は3つあります。
1)体験が価値になる(UI/UXが成果に直結する)
会員サイトは、ほんの少しの導線の違いで成果が変わります。
登録→利用→継続→休眠→復帰という流れの中で、どこでつまずくかがそのまま数字になります。
SaaSは「型」が強い一方、型から外れた瞬間に
「できない」または「回避策によって運用の負担が増える」ことが起きやすくなります。
会員サイトで体験を差別化したいほど、ここが重要になります。
2)運用が増える(ユーザーが最初は言わない要件が後から出る)
会員サイトは、最初の要望だけで完成しません。
運用が始まると、多くの場合出てくるのが「権限」の例外です。
経験上、典型例が「スーパー管理者」です。
最初から「スーパー管理者が欲しい」と言う人は多くありません。でも、情報の整合性を保つ人や、トラブル時に全権限で調整できる役割は、高い確率で必要になります。
こうした「言われてないけど必要」な要件は、会員サイトで特に発生しやすいです。
3)拡張が前提(改善サイクルが回り続ける)
会員サイトは、施策を回すほど要件が増えます。
「この会員ランクだけ特別な導線にしたい」「CRMにこのデータを渡したい」「キャンペーンだけ表示を変えたい」など、改善が前提です。
つまり会員サイトは後から変えることが前提になります。
だからこそ、変えたい領域=差別化領域を決めることが、構築方法を選ぶときの出発点になります。
差別化領域の決め方(迷ったらこの問い)
差別化領域が決まらないときは、機能名ではなく問い方を変えることがコツです。
- 会員サイトで成果を出すために変更したい部分はどこか?
- その内容は毎月や四半期ごとに変わるのか?
- 外部連携やアクセス集中への対応が必要か?
この3つの観点で整理すると、構築方法の向き不向きが見えやすくなります。
SaaS/パッケージ/スクラッチの向き不向き(会員サイト目線)
ここからは、よくある方式を会員サイト目線で整理します。
SaaS:単機能には強いが、足し算で詰まりやすい
SaaSが力を発揮するのは、例えばワークフローやフォーム、名刺管理のような単機能をピンポイントで入れるときです。
一方、会員サイトのように「周辺機能が増えていく」領域では、SaaSを足していくと統合が難しくなります。
現場で起きるのは、こんな流れです。
「この機能はSaaSで十分」→「周辺も必要」→「別のSaaSも追加」→「合計が見えない」→「制約が運用負担に変わる」
SaaSが悪いのではなく、会員サイトは機能を足していく形になりやすい構造だという話です。
パッケージ:要件に合うと強いが、ズレは運用負担になりやすい
パッケージは、要件が合うと費用対効果が高いです。
ただ、ズレた部分を「運用でカバー」し始めると、現場の負担が増えます。
会員サイトは運用が増えやすいので、この運用でカバーする作業が積み上がりやすい点に注意が必要です。
スクラッチ:自由度・拡張性・性能に強い(ただし誤解されやすい)
スクラッチは自由度が最大で、会員サイトが求めがちな「独自性」や「拡張」に強いです。
ただし、スクラッチが必要以上に重く見える原因があります。それは…
スクラッチ=全部作るという誤解です。
実際には、スクラッチにも現実的な作り方があります。
「スクラッチ=全部作る」じゃない:共通はモジュール、差別化は個別開発
会員サイトで現実的なのは、次の考え方です。
- 共通領域:認証、会員管理、通知、管理画面など → 再利用・モジュール化
- 差別化領域:導線、出し分け、会員ランク、独自ルール → 個別開発
共通部分を安定させるほど、改善が速くなります。
逆に、差別化したいところに開発の焦点を当てられます。これが現実的なスクラッチの考え方です。
構築方法を選ぶときに大事なのは、スクラッチを選ぶかどうかよりも、
「どこを共通にして、どこを差別化するか」を決めることです。
構築方法の簡易診断(YESが多いほどスクラッチ/ハイブリッド寄り)
以下のYESが多いほど、自由度・拡張性が重要になるためスクラッチ寄りになります。
- UI/UXをブランドに合わせて作りたい
- 会員ランク/出し分け/独自ルールがある
- CRM/MA/決済/基幹など連携が複数ある
- キャンペーン等でアクセスが一時的に集中する
- 改善サイクルを回したい(毎月導線を変えたい)
YESが少ない場合は、SaaS/パッケージが合う可能性もあります。
大事なのは、「方式ありき」ではなく、要件との相性で考えることです。
よくある失敗パターン(ここだけ避ければ前に進む)
最後に、構築方法を選ぶときの失敗で多いパターンを3つだけ挙げます。
1)「今の要件」だけで決め、拡張で詰まる
会員サイトは改善が増えるので、「将来変わる領域」を見落とすと後から対応しづらくなります。
2)制約を運用で吸収し続け、現場が疲弊する
システムで対応できないことを運用で回避し続けると、開発費としては見えにくい負担が現場に積み上がります。
3)TCOを見ずに人数課金・追加費用が効いてくる
SaaSは「足し算」と「年数」と「人数」で総額が大きくなります。初期費用だけで判断すると、後で想定より高くなることがあります。
会員サイトの構築方法は「差別化領域」から考える
会員サイトは標準化しにくい領域です。だから構築方法で迷いやすくなりますが、結論はシンプルです。
- まず差別化領域(変える部分)を決める
- 構築方法は要件との相性で選ぶ
- スクラッチは「全部作る」のではなく共通部分と差別化部分を分けて現実的に構築できる
次の記事では、構築方法を選ぶときに見落とされがちな「コスト(TCO:導入後も含めた総コスト)」を、月額課金の落とし穴(足し算・年数・人数)も含めて整理します。
関連記事:月500円に見えるSaaS人数課金は「足し算」と「年数」で総額が変わる
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将来的な機能追加や運用改善を見据えたWebアプリケーション開発を検討したい方は、下記ページも合わせてご覧ください。
会員サイトの構築方法に関するよくある質問
Q1. 会員サイトに「スーパー管理者」って本当に必要ですか?
最初から要望に出ないことが多いですが、運用が始まると「例外処理」や「整合性維持」のために必要になりやすい役割です。要件定義段階で想定しておくと、運用が安定します。
Q2. SaaSは結局ダメなんですか?
単機能のピンポイント導入には強いです。ただ会員サイトは周辺機能が増えやすく、足し算で制約やコストが増えていくので、差別化領域が大きいほど相性の確認が重要です。
Q3. スクラッチにすると必ず高くなりますか?
「全部自作」前提だと高く見えますが、共通領域をモジュール化し、差別化領域に集中するハイブリッド型の作り方で、現実的な費用・期間に収まるケースがあります。
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