SaaS増加でUX崩壊?「統合マイページ」で解決する設計術

Web制作・開発
2026.01.28
LYZON編集部

SaaSの導入は個別業務の効率化に劇的な効果をもたらします。しかし一方で、SaaSが増えるほど全体の「ユーザー体験(UX)」が分断され、使い勝手が低下しやすいのも現実です。よくあるのが、ユーザーがサービスごとに何度もログインを強いられ、ステータスや通知の確認のために複数の画面を行き来するパターンです。これはユーザーのストレスになるだけでなく、社内運用側も「どこを見れば正しい情報なのか」が分からなくなり、問い合わせ対応の工数が肥大化する原因となります。

この課題への有効打となるのが、統合マイページ(会員サイトのポータル化)という考え方です。

本記事では、SaaS乱立によるUX低下を防ぐ「統合マイページ」の設計術を解説。全て作らず要所を押さえて顧客体験を向上させる、Web担当者向けの実践ノウハウを紹介します。

目次

    SaaS乱立で起きる“静かな破綻”とは

    SaaSは導入初期の満足度が高い一方、数が増えてくると「サイロ化(情報の分断)」が進み、次のような課題が徐々に表面化してきます。

    • ユーザー:ログイン先が増え、ID管理や状況確認が面倒になり、利用頻度が下がる。
    • 運用担当:問い合わせが来ても「どのSaaSのどの画面の話か」特定に時間がかかる。
    • 企画担当:顧客データが各所に散らばり、UX改善の仮説や施策が立てづらい。
    • 情シス:権限管理・退職者対応・監査対応が複雑化し、セキュリティリスクが高まる。

    重要なのは、SaaS自体が悪いのではなく、「全体を繋ぐ設計(統合の設計)」がない状態で増やしてしまったことが本質的な問題だという点です。

    統合マイページでやることは「全部まとめる」ではない

    全SaaSの機能を一画面に集約する(フルスクラッチ開発)」という重たいプロジェクトをイメージされがちですが、多くのケースでは、より現実的な落としどころがあります。
    コストと効果のバランスが良いのは、次の2点を統合することです。

    入口の統合(どこから入るか)

    ユーザーを迷わせないために、まずは「動線」を一つに集約します。

    • ログインの入口:シングルサインオン(SSO)で一度の認証で済むようにする。
    • 手続きの入口:申請、問い合わせ、購入、予約などのメニューを一覧化する。
    • サポート導線:FAQ、問い合わせフォーム、通知履歴へのアクセスを集める。

    状態の可視化(ステータスの一元表示)

    ユーザーがマイページにログインする理由の多くは、「自分の状態(ステータス)」の確認です。

    • 申請は承認されたか?
    • 支払いは完了したか?
    • 配送は進んでいるか?
    • 予約は確定したか?

    この「状態」だけを、ポータル側にAPI連携などで集約表示するだけでも、ユーザーが複数サービスを行き来する必要が減り、確認の手間を大きく下げられます。

    成功する統合のコツ:ポータルが持つのは「状態」と「通知」

    統合プロジェクトで失敗しやすいのは、「各SaaSの機能まで全部ポータル側で作ろうとする」設計です。これではポータル自体が肥大化し、改修コストが莫大になります。 持続可能な設計は、以下のように役割を分担することです。

    1. ポータル(統合マイページ):状態(サマリ)、通知(何が起きたか)、ネクストアクション(ToDo)を表示
    2. 各SaaS:詳細な入力作業や閲覧機能を提供

    「確認」はポータルで完結させ、「作業」が必要な時だけ各サービスへ遷移させる。この分担こそが、実装コストを抑えつつUXを最大化するポイントです。

    連携が増えるほど難しくなる:だから先に“型”を作る

    SaaS連携は、対象が増えるほど指数関数的に難易度が上がります。認証、データ形式、API仕様、閲覧権限などの論点が一気に増えるからです。 そのため、統合ポータルを作る前に、拡張に耐えうる「最低限の型(アーキテクチャ)」を策定します。

    • 認証:SSO(SAML/OIDC)をどう実装するか
    • データ:ポータルが保持するマスターデータは何か(プロフィール、契約情報など)
    • API:どのタイミングで同期するか(リアルタイムAPIか、定期バッチか)
    • 権限:誰にどのメニューを見せるか(管理者/一般/代理店などの出し分け)

    この“型”さえあれば、将来的に新しいSaaSを追加してもシステムが破綻することはありません。

    小さく始める:統合マイページの第一歩

    最初から完璧なフル統合を目指す必要はありません。ユーザーメリットが大きく、社内合意も取りやすい領域から「小さく始める」のが成功への近道です。

    • 通知の統合:バラバラに届くメールやプッシュ通知を、ポータル内の「お知らせ」に一本化する。
    • 状態の統合:申請中・配送中などの“主要ステータス”だけトップ画面に出す。
    • 問い合わせの統合:問い合わせフォームへの導線を一元化し、迷子をなくす。

    これだけでもユーザー体験は大きく改善し、問い合わせ削減などの定量的な効果が見込めます。

    SaaS活用が進む企業ほど、「つなぐ設計」の巧拙がビジネス成果を左右します。

    もし現在、「SaaSが増えてログイン先が分散している」「会員向け導線を一本化したいが、統合範囲の判断に迷っている」といった状況であれば、まずは現状整理からご支援できます。

    • 利用中のSaaS一覧
    • ユーザーからよく来る問い合わせ内容(「どこを見ればいいか分からない」等)

    まずは上記をご共有いただければ、申請・支払い・配送などの手続き状況や重要なお知らせを、マイページでまとめて確認できる形をご提案します。

    運用や連携が複雑化する前に、一度ご相談ください。

    統合マイページとSaaS連携に関するよくある質問

    Q1.SaaSを増やすと、なぜユーザー体験が悪くなりやすいのですか?

    A.サービスごとに「ログイン」「通知確認」「状態把握」が分断されるからです。ユーザーはただ「結果」を知りたいだけなのに、複数のサービスを行き来する必要が生じます。これが利用率の低下や、サポートへの問い合わせ増加に直結します。解決策として、入口と情報を集約する統合マイページ(ポータル)の構築が有効です。

    Q2. 統合マイページは“全部の機能をまとめる”必要がありますか?

    A. いいえ、その必要はありません。すべてを統合しようとすると開発規模が巨大化し、SaaS利用のメリットであるスピード感が失われます。現実的には「入口の統合」と「状態・通知の可視化」を優先し、詳細な操作は各SaaSへ遷移させる設計(疎結合な設計)が、コスト対効果に優れています。

    Q3. SaaS連携が増えるほど破綻するのを防ぐには?

    A.実装を始める前に、共通の“型(ルール)”を作ることです。具体的には、認証方式(SSO)、データの持ち方、同期タイミング、権限管理のルールを先に定義します。この土台があれば、後からSaaSを追加してもシステム全体の一貫性が保たれます。