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アジャイル開発とは?ウォーターフォールとの違いと本質を徹底解説

アジャイル開発とは

アジャイル開発とは、ウォーターフォール的な「固定計画・上流設計重視」の弱点を補うために生まれた、「変化に適応しながら価値を届けること」を目的とした開発思想です。
単なる「実行重視」ではなく、短いサイクルで実行と検証を繰り返す学習プロセスを重視し、結果として品質と顧客満足を高めることを目的としています。

アジャイルは2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言(Agile Manifesto)」として提唱された価値観と原則の集合であり、スクラムやXPなどの具体的手法(フレームワーク)とは異なる抽象レベルです。

価値観

ウォーターフォール:仕様が正で、計画通りに作ることが成功
アジャイル:価値が正で、価値に応じて仕様も変化しうる

ウォーターフォールとアジャイルの関係性

「変化に弱い」「要件確定に時間がかかる」といったウォーターフォールの課題を背景にアジャイルは広がりましたが、完全な対立構造ではありません。

誤解されがちな点

アジャイルの誤解:ノープラン・ノー設計で雑な進行
アジャイルの真実:小さな計画を柔軟に更新しながら進行

アジャイルの本質は、「とにかく動け」という行動主義ではなく、実行→フィードバック→改善という学習ループを高速で回すことにあります。

LYZONが大事にしているアジャイルの本質

アジャイル開発の本質

  1. 顧客・ユーザー価値の最大化にフォーカスしている
    最初から完全な仕様を作るのではなく、「価値の高いもの」から順に提供します。
    「作ることが目的」ではなく「使われること・効果が出ること」が目的になっています。
  2. 短いサイクルで“動く成果物”を継続的に提供している
    一定期間単位のスプリント(一般的には1~4週間だが柔軟に調整)で、リリース可能な完成品(Done)を積み上げています。
    「完成」の定義(Definition of Done)をチーム内で明確にしています。
  3. フィードバックと改善のループが機能している
    スプリントレビューで実際の動作を見せ、顧客・ステークホルダーのフィードバックを得て次に活かしています。
    振り返り(レトロスペクティブ)でプロセス自体も改善しています。
  4. 優先順位が明確に管理されている
    プロダクトの要件が整理されており、価値と優先順位に基づいてスプリントごとに選定されています。
    必要な変更があっても、優先順位やインパクトを検討したうえで取り込みます。
  5. チームが自己管理・自己組織化されている
    プロジェクトマネージャーの指示で動くのではなく、チームが目標に向けて自律的に動いています。
    タスク管理、工数見積り、進捗確認がチーム内で完結しています。

アジャイル開発と呼べない「似て非なる」例

状況 なぜアジャイルではないか
仕様が不明瞭なまま手を動かす 顧客価値や目標が見えず、戦略的でないただの場当たり的開発
動くものを作らず、話し合いばかり 実際のプロダクトを見せなければ、学びも改善もできない
開発がスプリントで進むだけ スプリントで開発していても、優先順位のないToDo消化であればウォーターフォールと変わらない
レビューも振り返りもない 学びや改善のサイクルが回っていないため、継続的に価値を届けられない

アジャイル開発導入の難しさ

アジャイル開発とウォーターフォール開発のせめぎあい

アジャイル開発は、実際、スマホアプリなどを開発する際に、単機能の構築が比較的に簡易である開発に用いられてきた一方で、基幹システム開発においては、機能が独立せず、他の機能との関連性が高いシステムでは、ウォーターフォール型の開発がとられることが多いです。 今後大きめのシステムであっても、お客様からアジャイル開発を求められることが増えていきます。 ただし、スマホアプリのように機能が疎結合にできておらず、マイクロサービス化していない状態では、どうしてもスプリントが長くなってしまう傾向があり、教科書的なアジャイル開発に書いてある4週間1サイクルが現実的でないです。

よく起こる悪い例

  1. フロントの改修だけアジャイルになってしまうことが出てくる
    スプリントの期間が短いことで、スプリントに間に合うものしか開発対象でなくなり、顧客価値に焦点が当たらず、本質から外れてしまいます。
    【解決策】スプリントの期間単位を柔軟に調整
    • 大規模開発では、1スプリントで完結する機能が見つけにくいため、4週間を超えるスプリント期間(例:6週間)やエピック/サブ機能単位でスプリントの粒度を再定義します。
    • スプリントレビューで「小さくても動くもの」を示す工夫をします。(例:API単体、モック動作など)
  2. 改修に時間がかかりすぎる
    実際、システムが複雑に絡んでいる場合、考慮すべき箇所が多くなります。システムの複雑さに合わせて、導入が必要です。
    【解決策】システムの標準化、マイクロサービス化への取り組み
    システムの機動力を高めるために、標準化やマイクロサービス化を進めないといけません。そこができていないのにも関わらず、強引に短期間のスプリントを進めようとすると現場の開発が破綻し、品質低下などの問題を生んでしまいます。
    システムのマイクロ化が進んだものから、アジャイルを導入していくなども1つの方法です。
  3. システムの品質が低下する
    多くの関連性が高いシステムでは、設計時に連携の考慮などが必要になります。そのために設計を厚くするか、テストを厚くするかどちらかのアプローチが必要です。
    【解決策】チームの力量に合わせて、アジャイルとウォーターフォールのハイブリッド運用設計
    要件定義や全体設計はウォーターフォール的に、構築フェーズはアジャイルでというハイブリッドモデルなどを導入します。設計フェーズでも「重要要件を決めるためのスパイクスプリント(技術調査フェーズ)」を導入するなど、適宜工夫します。
    ただし、ハイブリッド運用は現実解ですが、曖昧にすると失敗します。

アジャイル開発での実績

数万人が利用する社内ポータルサイトの開発に参画

私たちは、大手企業T社の全社員が利用する社内ポータルサイトの追加開発に携わっています。
日常業務に欠かせないツールであるこのサイトの利便性や機能向上に貢献しています。

2週間ごとに成果を届けるアジャイル開発体制

開発は2週間を1スプリントとしたアジャイル開発で進行しています。要件定義から設計・開発・リリースまでを短いサイクルでくり返すことで、変化に柔軟に対応しながら着実に価値を積み上げています。

お客様と一緒に取り組む混合チーム体制

LYZONとT社の社員が1つのチームを構成し、密に連携を取りながらプロジェクトを進めています。
私たちは、外部委託という立場にとどまらず、お客様のチームの一員として課題に向き合い、共に改善を続けています。

課題に応じて柔軟に体制を構築

課題の規模や内容によっては、アジャイル開発チームとは別に、新たなチームを編成して対応を進めることもあります。お客様のニーズや状況に応じて最適な体制を柔軟に整えることで、迅速かつ的確な対応が可能です。

まとめ

アジャイル開発は、単なる手法ではなく、顧客価値の最大化という目的に向かう“姿勢”そのものです。変化が激しく、予測困難な現代において、変化にしなやかに適応しながら前進できるアジャイルの考え方は、ソフトウェア開発にとどまらず、組織の在り方や働き方にも応用できる普遍的なアプローチです。
これからの時代、私たちはより多様な課題やニーズに直面するでしょう。だからこそ、計画通りに進めること以上に、共創し、学び合いながら最善を選び続ける姿勢が重要になります。
アジャイルは、その未来を切り拓くための頼もしい道しるべとなるはずです。

LYZONには国内トップクラスの実績があります