大規模WebサイトのCMS刷新で最初に整理すべきスケジュールと予算
大規模WebサイトのCMSリニューアルでは、製品の選定や画面デザインより前に、プロジェクト全体の進め方を整理する必要があります。
数千から数万ページを管理するサイトでは、CMSをインストールしてテンプレートを制作するだけでは構築は完了しません。コンテンツの棚卸し、移行方針、権限、承認フロー、外部システム連携、URL設計、公開後の体制まで、複数の要件を段階的に決める必要があります。
しかし、大企業では同じCMS基盤を10年前後利用するケースも多く、前回のリニューアルを経験した担当者が社内に残っていないこともあります。その結果、必要な工程を把握できないまま、短い期間や不十分な予算で計画を始めてしまうことがあります。
本記事では、大規模CMSリニューアルの企画段階で整理すべき工程と、スケジュール・予算を検討する際の判断軸を解説します。
目次
大規模CMSリニューアルでは、製品導入以外の工程が多い
CMSリニューアルを「現在のCMSを新しい製品へ置き換える作業」と捉えると、必要な期間や費用を過小評価しやすくなります。
一般的な大規模CMSリニューアルでは、製品選定に加えて、次のような項目を検討します。
- 現行サイトの棚卸しと新サイトの情報設計
- テンプレートとコンポーネントの設計
- 承認フローと権限の整理
- コンテンツの移行方針
- SEO・アクセシビリティ・セキュリティ要件
- 認証基盤や外部システムとの連携
- 機能・性能・運用テスト
- 公開切り替えと公開後の運用体制
例えば、ニュース記事を登録した際に、詳細ページだけでなく一覧ページや関連ページにも情報を反映する場合、CMS内のデータ構造と表示ルールを定義しなければなりません。
承認者が部門やコンテンツ種別によって異なる場合は、ワークフローの分岐条件が必要です。担当者ごとに編集可能な範囲を制御する場合は、ユーザーグループと権限の設計も発生します。
これらはCMSを導入した後に考える項目ではなく、要件定義や設計段階で決める内容です。
最初にスケジュールを決めるのではなく、作業範囲を整理する
プロジェクト初期に「半年後に公開したい」といった期限が設定されることは珍しくありません。ただし、公開日だけを先に決めても、対象ページ数や移行方法が決まっていなければ、実行可能な計画にはなりません。
まず整理すべきなのは、スケジュールではなく作業範囲です。2万ページあるサイトでも、すべてのページをそのまま移行するとは限りません。更新されていないページを削除する、重複ページを統合する、一部のコンテンツだけを新しいテンプレートへ変換するといった判断が必要です。
移行対象が1万ページなのか5千ページなのかによって、作業量は大きく変わります。自動移行できるページと、人が内容を確認するページの比率によっても、必要な期間は異なります。
スケジュールを作成する際は、次の順序で前提条件を整理します。
- 移行対象ページ数と新規制作ページ数を整理する
- テンプレートとコンポーネントの種類を整理する
- 自動移行と手動確認の対象を分ける
- 外部連携とテストの対象範囲を整理する
- 部門ごとの確認期間と公開前後の更新停止期間を加える
- 一括公開、優先ページのみの移行、段階公開を比較する
条件が未確定の場合は、全ページ移行、優先ページのみ移行、段階公開といった複数案を比較する方法も有効です。
PoCだけでは本番構築の期間を判断できない<
新しいCMSの操作性や技術的な実現性を確かめるために、PoCを実施するケースがあります。PoCは、特定の機能や連携方式を検証するためには有効です。
しかし、小規模な検証環境で画面を作成できたからといって、本番サイト全体を同じ期間で構築できるとは限りません。
本番構築では、次のような項目まで検討する必要があります。
- 例外ページへの対応
- 複数部門で利用する権限構造とワークフロー
- 大量データの移行方法
- 既存システムとの接続条件
- 本番相当構成での性能
- 監視とバックアップ
- 更新担当者の操作手順
- 障害時の判断基準と対応手順
PoCの目的と検証対象を明文化しなければ、検証結果を本番計画へ適切に反映できません。PoCで確認する範囲と、本番工程で別途整理する範囲を分けて計画することが重要です。
予算は構築費だけでなく、要件定義と移行費も含めて考える
CMSリニューアルの予算が不足する原因の一つは、構築費を中心に見積もり、企画・要件定義・移行・テストの工数を十分に含めていないことです。
特に大規模サイトでは、関係部門が増えるほど確認と調整の回数も増えます。広報、マーケティング、情報システム、事業部、法務、セキュリティ部門が参加する場合、それぞれの要件と責任範囲を整理する必要があります。
CMS本体の費用が同じでも、次の条件によってプロジェクト全体の予算は変わります。
- ページ数とコンテンツの種類
- 移行データの品質
- 承認フローと権限の複雑さ
- 外部システムとの連携数
- 多言語対応の範囲
- セキュリティ審査の内容
- CMSを利用する部門数
製品ライセンス、インフラ、設計、開発、移行、テスト、教育、保守を分けて整理することで、どの条件が費用に影響しているのかを把握しやすくなります。
RFPには製品要件だけでなく、プロジェクトの前提を記載する
RFPでCMSの機能一覧だけを提示すると、各社が異なる前提で見積もる可能性があります。
例えば、一方の会社は全ページの手動確認を含め、別の会社は自動移行のみを前提としている場合、金額だけを比較しても適切に判断できません。
RFPには、次のようなプロジェクトの前提条件を記載します。
- リニューアルの目的
- 現行サイトの規模と構成
- 対象サイトと対象言語
- 移行対象の想定
- 必要な外部システム連携
- 公開希望時期
- 社内の実施体制
- ベンダーへ依頼する範囲
- 公開後の保守・運用体制
確定していない項目は、無理に決めるのではなく、未確定であることを明記し、提案時に整理を求める方法もあります。
前提条件を揃えることで、ベンダーごとの提案内容、スケジュール、費用の差を比較しやすくなります。
大規模CMSリニューアルは企画段階の整理が成果を左右する
CMS製品の機能が充実していても、対象範囲や責任範囲が曖昧なままでは、設計開始後に確認事項が増えます。
企画段階では、製品を決めることよりも、何を変更し、何を維持し、どの順番で進めるかを整理することが重要です。
長期間同じ基盤を利用してきた企業では、現在の担当者が過去の設計意図を把握できていない場合があります。現行仕様をそのまま新しいCMSへ移すのではなく、現在の業務や今後の事業計画に合わせて要件を見直す必要があります。
また、AIの出力を確認するための基準も必要です。設計案が業務要件に合っているか、既存システムとの連携条件を満たしているか、セキュリティや監査の要件に反していないかを評価できなければ、AIの出力を安全に活用することはできません。
LYZONでは、大規模Webサイトや複数サイトを対象としたCMSリニューアルについて、企画・構想段階から支援しています。現行サイトの棚卸し、RFP作成、CMS選定、移行方式、スケジュール、概算予算の整理まで、検討状況に合わせて対応します。
「まだ製品を決めていない」「社内で予算を申請するための判断材料が不足している」といった初期段階でもご相談いただけます。まずは、サイト規模、現在の課題、予定している施策を整理するところからお問い合わせください。
大規模CMSリニューアルに関するよくある質問
Q1. 大規模CMSリニューアルにはどの程度の期間が必要ですか?
サイト規模、移行ページ数、テンプレート数、外部連携、社内の確認体制によって異なります。製品導入だけでなく、要件定義、設計、移行、テスト、公開準備を含めて見積もる必要があります。まずは作業範囲を整理し、工程ごとの期間を算出します。
Q2. CMS製品を決めてから要件定義を始めてもよいですか?
製品を先に決める方法もありますが、必要な機能や将来の連携条件を整理せずに選定すると、追加開発が増える可能性があります。少なくとも、サイト規模、利用部門、承認フロー、移行、外部連携は製品選定前に整理することが望まれます。
Q3. PoCを実施すれば本番構築のリスクを減らせますか?
検証対象を明確にすれば、技術面や操作面の不確実性を減らせます。ただし、PoCだけで移行工数や部門間調整まで判断することはできません。検証結果と本番工程を分けて計画する必要があります。
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