【AIプロダクトのUX設計】“使われるAI”をどう作るか
AI機能は「作っただけ」では使われない
AIを活用したサービスは急速に増えていますが、「実装したものの、うまく使われない」というケースも少なくありません。
多くの場合、課題はAIの精度ではなく、ユーザーが“使い始められない”ことにあります。
- 入力の仕方がわからない
- 結果の意味が理解できない
- 次に何をすればいいかわからない
こうした小さなつまずきが積み重なり、AI機能は使われないまま放置されてしまいます。
本記事では、LYZONが手がけたAIライティングツール「MarkAI」の開発事例をもとに、AI機能を“使える体験”にするためのUX設計について紹介します。
なぜAI機能は使われなくなるのか
AI機能が使われない理由は、ある程度パターン化されています。
- とりあえずチャットUIを置いている
- 入力の自由度が高すぎて、何を聞けばいいかわからない
- 結果は出るが、どう解釈すればいいかわからない
- 次のアクションにつながらない
一見すると「高度なAI機能」を実装しているように見えても、ユーザー視点では“扱いづらいブラックボックス”になっているケースが多いのです。
AIは「使い方がわかる人だけが使えるツール」になりやすい
ここにUX設計の課題があります。
今回のアプローチ:「使えるAI」にするためのUX設計
今回のプロジェクトでは、AI機能そのものの精度向上だけでなく、「ユーザーが自然に使い始められる状態」を設計することに重点を置きました。
実際にAIライティングツールの開発においては、機能としては成立しているにも関わらず、入力段階で手が止まってしまうという課題がありました。
そこで本プロジェクトでは、単に「入力できるUI」を用意するのではなく、そもそも入力から始めさせない設計を取り入れています。
具体的には、
- 初回利用時はクイックアクションとしてボタンを配置し、選択だけで開始できる
- 2回目以降はプロジェクトをプルダウンから選択し、スムーズに再開できる
といった形で、ユーザーが“考える前に進める”導線を設計しました。
その上で、「入力できる」「理解できる」「次に進める」という一連の体験につなげています。
「入力させる」のではなく、「選択から始められる」設計にする
AIを“機能”ではなく“体験”として扱う
これが今回のUX設計の大きなポイントです。
入力で止まらせない:曖昧さを補完する設計
AI機能において最初のハードルになるのが「入力」です。
ユーザーは「やりたいこと」は持っていても、それを適切な言葉に落とし込めるとは限りません。
そこで今回は、
- 曖昧なキーワード入力を起点に
- 関連キーワードを提示し
- 選択しながら補完できるUI
を設計しました。
「考える」から「選ぶ」へ変換する
この変換によって、ユーザーは手を止めることなく次のステップへ進めるようになります。
迷わせない:ステップ分解による体験設計
AIツールは自由度が高い一方で、「何から始めればいいかわからない」という問題を抱えがちです。
そこでコンテンツ生成のプロセスを分解し、
- ステップごとに操作を区切る
- 現在位置を明示する
- 1つずつ進められる構造にする
という設計を行いました。
“今やるべきこと”を1つに限定する
これにより、特に初心者でも迷わず操作できる状態を実現しています。
不安をなくす:説明をUIに組み込む
AIに対する不安の多くは、「この操作で何が起きるかわからない」ことに起因します。
そのため、
- 各ステップにガイド文を配置
- 操作の目的を明示
- 流れの中で自然に理解できる構成
とすることで、説明をUIに内包しました。
“読ませる説明”ではなく“使いながら理解できる設計”
これにより、ユーザーの心理的ハードルを下げています。
ノウハウを内包する:プロンプト設計による品質担保
AI機能を業務で活用する上での大きな課題の一つが、「アウトプットの品質がユーザーのスキルに依存してしまうこと」です。
一般的に、AIの出力品質はプロンプトの設計に大きく左右されます。
しかし、すべてのユーザーが適切な指示を設計できるとは限りません。
そこで本プロジェクトでは、ユーザーが細かい指示をしなくても、一定の品質を担保できるようプロンプト設計をあらかじめ組み込んでいます。
具体的には、
- マーケティングに適した構成やトーンになるよう調整
- 文章量や粒度の最適化
- コンテンツとして成立する前提条件の付与
など、これまでのコンテンツマーケティング支援で蓄積してきたノウハウをもとに、アウトプットの質を底上げする設計を行っています。
またユーザーごとの要件に対応できるよう、用語の指定をすることで表記ゆれ(例:PM、プロジェクトマネージャーなど)を防ぐことができる追加プロンプトも用意しています。
このようにプロンプト設計をUIの裏側に組み込むことで、ユーザーのスキルに依存せず、安定したアウトプットを実現しています。
「うまく指示できること」ではなく、「誰が使っても一定の成果が出ること」
AIの活用において重要なのは、設計による品質担保です。
継続して使われる:業務に組み込む設計
AI機能は「一度使える」だけでは不十分で、業務の中で継続的に使われることが重要です。
今回の設計では、
- 作業フローの可視化
- 入力負担の軽減
- スムーズな生成プロセス
を通じて、日常業務に組み込みやすい体験を実現しました。
“使える”ではなく“使い続けられる”ことを設計する
この視点が、実運用における価値を大きく左右します。
まとめ:AI UX設計で重要なのは「使い始め」と「次の一手」
AIプロダクトにおいては高度な機能そのものよりも、
- 最初の一歩を踏み出せるか
- 結果を理解できるか
- 次の行動につながるか
といったUX設計が、成果に直結します。
AIは強力な技術ですが、その価値を引き出せるかどうかはUI/UXに大きく依存します。
LYZONのWebデザイナー マネージャー。社内案件ではディレクターも担当。
Webデザイン・コーディングとの比率は半々。2015年入社。
ロックンロールを深く愛している。