ネイティブ? クロス? WebView? スマホアプリ4つの作り方をざっくり理解する

Web制作・開発
2025.12.15
LYZON編集部

「アプリを作りたいのですが、ネイティブがいいんですよね?」
「クロスプラットフォームなら安く早く作れると聞いたのですが、本当でしょうか?」

スマホアプリの開発手法について、こうしたご相談をいただくことがよくあります。
一方で、「それぞれの違いをきちんと説明できる人」は社内にあまりおらず、判断に困ってしまう、という声も少なくありません。

この記事では、専門用語をできるだけ避けながら、スマホアプリの代表的な「4つの作り方」 をざっくり整理します。
詳細な技術解説というよりも、「企画の際、最低限ここだけ押さえておけば大丈夫」という視点でまとめています。

目次

    まずは「4つのパターン」があると知っておく

    スマホアプリの作り方は、細かく分けるとさまざまな方式がありますが、まずは次の4つを押さえておくと話が整理しやすくなります。

    • ネイティブアプリ
    • クロスプラットフォームアプリ
    • Web+WebViewアプリ
    • SaaS型(既製アプリのカスタマイズ)

    それぞれの特徴を、イメージしやすい形で簡単に見ていきます。

    ネイティブアプリ ―「一番リッチ、でも工数も重い」王道パターン

    ネイティブアプリ は、

    • iOSなら「iOS専用の言語・技術」
    • Androidなら「Android専用の言語・技術」

    で、それぞれ別々に作る方式です。

    メリット

    • 画面表示や動作がなめらかで、体感的な「気持ちよさ」を出しやすい
    • カメラ、位置情報、プッシュ通知など、スマホの機能をフルに活用しやすい
    • OSの新機能にも、比較的早く対応しやすい

    デメリット

    • iOSとAndroidでほぼ二本分作るイメージになる
    • 開発に必要なエンジニアのスキルセットが増える
    • 機能追加や改修も、基本的には両OS分必要

    「とにかくUI/UXにこだわりたい」「アプリ自体がビジネスの中心」という場合は、ネイティブが有力候補になりますが、
    そこまで求めない場合は、もう少し軽い方式も検討の余地があります。

    クロスプラットフォーム ―「1つのコードを、2つのOSで利用」

    クロスプラットフォーム は、
    「1つのコードで、iOSとAndroid両方にアプリを展開しよう」という発想の手法です。

    代表的な技術にもいろいろありますが、ここでは考え方だけ押さえれば十分です。

    メリット

    • iOS/Androidの両方を、一つのコードベースで管理できる
    • ネイティブよりも、開発効率や保守性が上がるケースがある
    • Webエンジニア寄りのスキルでも開発に参加できる場合がある

    デメリット

    • 実際の案件では、結局「一部はネイティブで個別対応」ということも多い
    • 非常に凝ったUI/アニメーションや、OSごとに大きく違うデザインを求める場合は工夫が必要
    • 「コードを全て共通化できます」と言い切れるケースは意外と少ない

    ポイントは、「方式名だけで決めないこと」です。
    同じ“クロス”でも、どこまで共通で、どこから個別対応か で、現場の工数感は大きく変わります。

    Web+WebView ―「中身はWebサイト、枠だけアプリ」

    Web+WebView 方式は、
    「中身はWebサイト(HTML)で作り、アプリはそれを表示する“枠”として使う」作り方です。

    メリット

    • 画面の中身はWebサイトと同じ技術で作れるため、既存のWeb制作チームを活かしやすい
    • 画面の更新をCMSで行えるようにしやすい
    • プラットフォームごとの差分を、ある程度吸収しやすい
    • “アプリ版Webサイト”のような情報提供系に向いている

    デメリット

    • 「アプリらしいサクサク感」を出すのは、ケースによっては工夫が必要
    • 通知・カメラ・位置情報などは、結局ネイティブ実装が必要になる
    • オフライン動作や、ゲームのような高度なUIとは相性があまり良くない

    「ニュース配信アプリ」「お知らせアプリ」「会員向け情報アプリ」など、
    “読む・見る”が中心のアプリ では、候補としてかなり現実的な選択肢になります。

    SaaS型 ―「ゼロから作らず、既製アプリをカスタマイズ」

    もう一つの選択肢として、
    既に用意されたアプリ基盤(SaaS)を使い、自社用にカスタマイズする パターンがあります。

    具体的には、

    • ポイントアプリや会員証アプリのプラットフォーム
    • ECパッケージに付属する公式アプリ
    • 特定業種向けの既製アプリ(店舗向け/医療向け など)

    といったものです。

    メリット

    • ゼロから作らない分、初期費用とリリースまでのスピードで有利なケースが多い
    • すでに実績のあるUIや機能を使える
    • 保守・アップデートもサービス提供側が担ってくれる部分が多い

    デメリット

    • 「やりたいことすべて」を詰め込むのは難しく、サービス側の仕様に合わせる必要がある
    • UIや機能自由度は、スクラッチ開発に比べると制限される
    • ユーザー数課金のライセンス費が、長期的には大きくなる場合もある

    何を重視するかによって、適切な選択肢は異なる

    ざっくりとしたイメージですが、以下のように考えると整理しやすくなります。

    • UI/UXのこだわりが最優先
      → ネイティブ or ネイティブ寄りクロス
    • 開発スピードとコストをバランス良く
      → クロスプラットフォーム or Web+WebView
    • 情報提供が中心で、コンテンツ更新頻度が高い
      → Web+WebView+CMS連携
    • 業種・用途がSaaSとよくマッチしている
      → SaaS型をまず検討したうえで、足りない部分を別途検討

    方式の名前ではなく、「目的」と「運用」を基準に選ぶ

    スマホアプリの開発方式は、どうしても「ネイティブが一番よい」「クロスなら安く済む」といったイメージで語られがちです。

    ですが重要なのは、

    • どんな目的でアプリを出すのか
    • 誰がどのくらいの頻度で、どの部分を更新するのか
    • 自社の体制(Webチーム/アプリチーム)がどうなっているのか

    といった運用まで含めた前提条件です。

    「なんとなくネイティブが良さそう」
    「とりあえずクロスにしておけば安心」

    といった決め方ではなく、
    この記事でご紹介した「4つのパターン」を頭に置きながら、考えてみてください。
    もちろん、LYZONにご相談いただければ、目的と運用面のバランスをみながら一緒に検討させていただきます。

    スマホアプリの作り方に関するよくある質問

    Q1. ネイティブ/クロス/Web+WebView/SaaS、結局どの方式を選べばよいですか?

    結論から言うと、「方式名」ではなく 目的と運用の前提条件から逆算して選ぶのがおすすめです。 ざっくり整理すると、次のようなイメージになります。

    • UI/UXのこだわりが最優先で、アプリそのものが事業の中心 → ネイティブ(もしくはネイティブ寄りのクロス)を第一候補に
    • 開発スピードとコストのバランスを取りたい(機能は標準的) → クロスプラットフォーム or Web+WebViewを候補に
    • ニュース・お知らせ・会員情報など、“読む・見る”が中心で更新頻度も高い → Web+WebView+CMS連携が現実的な選択肢に
    • ポイントアプリや会員証アプリなど、用途に合うSaaSが存在する → まずはSaaS型を検討し、不足分だけ別途補う

    そのうえで、

    • 誰がどのくらいの頻度でコンテンツを更新するのか
    • 社内にアプリ専門チームがあるのか、Webチーム中心なのか
    • 三年間でどの程度の機能追加・改修が見込まれるか

    といった条件を掛け合わせて、 「候補を2つほどに絞り込み、試算やPoCで最終判断する」という進め方が現実的です。

    Q2. アプリ開発は、初期費用と三年間の運用コストで何が違ってきますか?

    アプリ開発では、初期費用だけを見て方式を決めると、後から運用コストがふくらむことがよくあります。

    ネイティブアプリ

    • 初期費用:やや高め(iOSとAndroidをほぼ別々に作るイメージ)
    • 三年間の運用: OSアップデートへの追従や、機能追加を両OS分実装する必要があり、 長期的にもそれなりの費用を見込む必要があります。

    クロスプラットフォーム

    • 初期費用:ネイティブより抑えられるケースもあります。
    • 三年間の運用: 概ね1つのコードで済みますが、個別対応が増えると結局コストが近づくこともあり、 「どこまで共通・どこから個別か」の設計が重要です。

    Web+WebView

    • 初期費用:アプリ側は比較的軽く、Web部分を既存チームで作りやすい方式です。
    • 三年間の運用: 文言・画像・レイアウト変更をCMS側でまとめて行えるため、 コンテンツ更新が多いほど運用コストを抑えやすいです。

    SaaS型

    • 初期費用:ゼロ〜小さめになるケースが多いです。
    • 三年間の運用: 月額やユーザー数課金が積み上がっていくため、 利用規模や期間によっては、長期的にスクラッチと逆転することもあります。

    ですので、見積もりや比較検討では、 「初期費用+三年間の運用コスト+自社の体制で回せるかどうか」 をセットで見ていただくのが安心です。

    Q3. Web+WebView方式やCMS連携で、どこまでアプリをWeb側に寄せても大丈夫ですか?

    情報提供系のアプリであれば、 かなりの部分をWeb+CMS側に寄せてしまって問題ありません。

    Web側に寄せやすいものの例:

    • ニュース/お知らせ/キャンペーン情報
    • 記事コンテンツ、コラム、FAQ
    • 画像バナー、特集ページへの導線
    • 会員向けの閲覧コンテンツ(ログイン後に読む情報など)

    こうした「読む・見る」が中心の部分は、 CMSで一元管理し、Webとしてもアプリとしても同じコンテンツを配信する設計にすると、 更新の二重作業を減らしやすくなります。

    一方で、次のような要素はネイティブ実装や専用の仕組みが必要になることが多いです。

    • カメラ・位置情報・Bluetooth など、端末の機能を深く使う部分
    • オフライン前提で動かしたい部分
    • 高度なアニメーションや、ゲームに近いインタラクション
    • プッシュ通知の受信・タップ後の細かな挙動制御 など

    現実的には、
    「コンテンツはできるだけWeb+CMSに寄せる」 「アプリならではの体験は、必要な部分だけネイティブで作る」
    というハイブリッド構成を検討しておくと、 初期費用と運用コストのバランスを取りやすくなります。