会員サイトはSaaSが向かない?方式選定で迷わないための現場フレーム(SaaS/パッケージ/スクラッチの選び方)

Web制作・開発
2026.02.25
LYZON編集部

なぜ会員サイトは方式選定で迷うのか

会員サイトを作るとき、多くの人が最初にぶつかるのが「SaaSでいけますか?」「スクラッチは高いですよね?」という問いです。
ここで迷うのは、判断材料が足りないというより、比較の順番が難しいからです。
会員サイトは、単にログインやマイページを用意するだけでは成功しません。むしろ効いてくるのは、次の3つです。

  • 体験:登録導線、会員ランク、コンテンツの出し分け、UI/UX
  • 運用:権限、管理画面、問い合わせ対応、更新フロー、例外処理
  • 拡張:CRM/MA・決済・基幹などの連携、施策改善(A/B等)、将来追加

この3つが絡むので、機能比較から入ると迷子になりがちです。
そこでこの記事では、会員サイトで迷わないための方式選定を、現場で使えるフレームとして整理します。

目次

    方式は「差別化領域」で決める

    SaaSが良い/スクラッチが良い、という二択に落とすと必ず迷います。
    会員サイトの方式選定で一番効くのは、もっとシンプルな結論です。

    方式は「差別化したい領域」で決める

    • 標準でよい領域:なるべく早く、安く、安定して作る
    • 差別化する領域:自由度と拡張性を優先して作る

    会員サイトは作って終わりではなく、運用しながら育てます。だから「後から変える」箇所ほど、自由度が効いてきます。
    この“変える部分”がどこかを先に決めれば、方式は驚くほど決めやすくなります。

    会員サイトが「標準化しにくい」3つの理由

    会員サイトが方式選定で迷いやすいのは、標準化の難しさがあるからです。理由は3つあります。

    1)体験が価値になる(UI/UXが成果に直結する)

    会員サイトは、ほんの少しの導線の違いで成果が変わります。
    登録→利用→継続→休眠→復帰という流れの中で、どこでつまずくかがそのまま数字になります。
    SaaSは「型」が強い一方、型から外れた瞬間に
    “できない”か“回避策が運用負担になる” が起きがちです。
    会員サイトで体験を差別化したいほど、ここが効いてきます。

    2)運用が増える(ユーザーが最初は言わない要件が後から出る)

    会員サイトは、最初の要望だけで完成しません。
    運用が始まると、だいたい必ず出るのが「権限」の例外です。
    経験上、典型例が “スーパー管理者” です。
    最初から「スーパー管理者が欲しい」と言う人は多くありません。でも、整合性を保つ人や、トラブル時に全権限で調整できる役割は、ほぼ確実に必要になります。
    こうした「言われてないけど必要」な要件は、会員サイトで特に発生しやすいです。

    3)拡張が前提(改善サイクルが回り続ける)

    会員サイトは、施策を回すほど要件が増えます。
    「この会員ランクだけ特別な導線にしたい」「CRMにこのデータを渡したい」「キャンペーンだけ表示を変えたい」など、改善が前提です。
    つまり会員サイトは “後から変える”が当たり前
    だからこそ、変えたい領域=差別化領域を決めることが、方式選定の出発点になります。

    差別化領域の決め方(迷ったらこの問い)

    差別化領域が決まらないときは、機能名ではなく問いを変えるのがコツです。

    • 会員サイトで「変えて成果を出したい」のはどこか?
    • それは毎月/四半期で変わるか?(変更頻度)
    • 外部連携やピーク(瞬間的なアクセス集中)はあるか?

    この3つが見えてくると、方式の向き不向きがはっきりします。

    SaaS/パッケージ/スクラッチの向き不向き(会員サイト目線)

    ここからは、よくある方式を会員サイト目線で整理します。

    SaaS:単機能には強いが、足し算で詰まりやすい
    SaaSが活きるのは、例えばワークフローやフォーム、名刺管理のような 単機能をピンポイントで入れるときです。
    一方、会員サイトのように“周辺機能が増えていく”領域では、SaaSを足していくと統合が難しくなります。
    現場で起きるのは、こんな流れです。
    「この機能はSaaSで十分」→「周辺も必要」→「別のSaaSも追加」→「合計が見えない」→「制約が運用負担に変わる」
    SaaSが悪いのではなく、会員サイトは“足し算”になりやすい構造だという話です。

    パッケージ:ハマると強いが、ズレは運用負担になりやすい
    パッケージは、要件が合うと非常にコスパが良いです。
    ただ、ズレた部分を「運用でカバー」し始めると、現場の疲弊が起きます。
    会員サイトは運用が増えやすいので、この“運用で吸収”が積み上がりやすい点が注意ポイントです。

    スクラッチ:自由度・拡張性・性能に強い(ただし誤解されやすい)
    スクラッチは自由度が最大で、会員サイトが求めがちな「独自性」や「拡張」に強いです。
    ただし、スクラッチが必要以上に重く見える原因があります。それは…
    スクラッチ=全部作る という誤解です。
    実際には、スクラッチにも現実的な作り方があります。

    「スクラッチ=全部作る」じゃない:共通はモジュール、差別化は個別開発

    会員サイトで現実的なのは、次の考え方です。

    • 共通領域:認証、会員管理、通知、管理画面など → 再利用・モジュール化
    • 差別化領域:導線、出し分け、会員ランク、独自ルール → 個別開発

    共通部分を安定させるほど、改善が速くなります。
    逆に、差別化したいところに開発の焦点を当てられます。これが“ちょうど良いスクラッチ”です。
    方式選定で大事なのは、スクラッチを選ぶかどうかよりも、
    「どこを共通にして、どこを差別化するか」 を決めることです。

    方式選定の簡易診断(YESが多いほどスクラッチ/ハイブリッド寄り)

    以下のYESが多いほど、自由度・拡張性が効くためスクラッチ寄りになります。

    • UI/UXをブランドに合わせて作りたい
    • 会員ランク/出し分け/独自ルールがある
    • CRM/MA/決済/基幹など連携が複数ある
    • キャンペーン等でピークアクセスが尖る
    • 改善サイクルを回したい(毎月導線を変えたい)

    YESが少ない場合は、SaaS/パッケージが強くなる可能性もあります。
    大事なのは、“方式ありき”ではなく、要件との相性です。

    よくある失敗パターン(ここだけ避ければ前に進む)

    最後に、方式選定の失敗で多いパターンを3つだけ挙げます。

    1)「今の要件」だけで決め、拡張で詰まる
    会員サイトは改善が増えるので、「将来変わる領域」を見落とすと詰まります。
    2)制約を運用で吸収し続け、現場が疲弊する
    “できない”を運用で回避し続けると、コストは開発費ではなく現場負担として出ます。
    3)TCOを見ずに人数課金・追加費用が効いてくる
    SaaSは「足し算」と「年数」と「人数」で効きます。初期費用だけで判断すると、後で逆転しがちです。

    会員サイトの方式選定は「差別化領域」起点で迷わない

    会員サイトは標準化しにくい領域です。だから方式選定で迷いがちですが、結論はシンプルです。

    • まず差別化領域(変える部分)を決める
    • 方式は要件との相性で当てはめる
    • スクラッチは“全部作る”ではなく“共通+差別化”で現実解がある

    次の記事では、方式選定で見落とされがちな「コスト(TCO)」を、月額の罠(足し算・年数・人数)も含めて整理します。

    会員サイトの方式選定に関するよくある質問

    Q1. 会員サイトに“スーパー管理者”って本当に必要ですか?

    最初から要望に出ないことが多いですが、運用が始まると「例外処理」や「整合性維持」のために必要になりやすい役割です。要件定義段階で想定しておくと、運用が安定します。

    Q2. SaaSは結局ダメなんですか?

    単機能のピンポイント導入には強いです。ただ会員サイトは周辺機能が増えやすく、足し算で制約やコストが効いてくるので、差別化領域が大きいほど相性の確認が重要です。

    Q3. スクラッチにすると必ず高くなりますか?

    「全部自作」前提だと高く見えますが、共通領域をモジュール化し、差別化領域に集中する“ハイブリッド”の作り方で、現実的な費用・期間に収まるケースがあります。