PIM連携とクリエイティブを両立する、LYZONが開発したSitecore用独自モジュール「フレキシブルボディ」による設計

Web制作・開発
2026.11.02
前原
Webディレクター

製品数が数百から数千規模にのぼるメーカーにとって、PIM(Product Information Management:製品情報管理システム)とWebサイトの連携は、運用負荷を抑えるうえで欠かせない仕組みです。一方で、PIM連携を進めるほどページ表現が画一化し、ブランドサイトとしての世界観や訴求力が弱まる、という課題が少なくありません。

「正確な製品情報の自動反映」と「ページごとのクリエイティブ表現」は、しばしば相反するものとして扱われてきました。しかし、これはCMS側のボディ構造の設計次第で解決可能な論点です。本記事では、PIM連携の正確性を担保しながらページ単位での表現力を確保する、LYZONが開発したSitecore用独自モジュール「フレキシブルボディ」の考え方と、導入時の判断軸を解説します。

目次

    PIM連携が進むほど、なぜ表現が硬直化するのか

    PIMを導入する目的は、製品情報の一元管理と、複数チャネルへの正確な配信です。ECカタログ、代理店向け資料、公式サイトなど、出力先ごとに情報を作り直す運用を廃止できるため、大規模メーカーほど効果が大きい仕組みといえます。

    一方で、PIM連携をCMSに実装する際、多くのプロジェクトでは以下のような順番で設計が進みます。

    1. PIM側の項目定義に合わせて、CMS側にテンプレートを1種類作る
    2. 全製品ページをそのテンプレートで自動生成する
    3. 例外的に訴求したい製品は、別途「手動ページ」として切り出す

    この流れ自体は合理的ですが、進めるうちに次のような状況が発生します。まず、テンプレートに載せきれない訴求要素(動画、比較表、導入事例、世界観を伝えるビジュアル等)が増えていきます。次に、それらを載せた「手動ページ」の数が想定を超え、PIM連携ページと手動ページで情報の鮮度や責任範囲がズレはじめます。最終的に、どのページがPIM由来でどのページが手作りなのか、最上位管理者(CMS全体のガバナンスを担う管理者。各国サイトのマーケティング責任者とは別に置かれ、コンテンツの表現まで統制する存在)ですら把握しづらい状態になり、更新のたびに調整が増える構造が生まれてしまいます。

    「自動表示」と「クリエイティブ表現」を対立軸にしない発想

    この課題を解く鍵は、テンプレートは1つに保ったまま、ページ全体を「PIM領域」と「クリエイティブ領域」に分けて設計することです。ここで有効になるのが、LYZONが開発したSitecore用独自モジュール「フレキシブルボディ」です。

    フレキシブルボディは、ページの本文を「PIMから自動で表示する領域」と「編集者がブロック(部品)を組み合わせて構成する領域」に明確に分けて管理する仕組みです。クリエイティブ領域では、ブロックの種類、並び順、表示有無をページごとに切り替えられるため、同じテンプレートを使いながら、ページごとに異なる表現が可能になります。モジュラーコンテンツ設計や、ヘッドレス・コンテンツプラットフォーム(Contentful、Storyblok、Sanity等)で見られる柔軟なコンテンツブロックの思想を、PIM連携を前提としてSitecore上に実装したものが、このモジュールです。

    ポイントは、PIM領域とクリエイティブ領域の境界を明確に分けることです。仕様表・型番などの標準情報はPIM領域に自動反映され、更新もPIM側で完結します。一方、フラッグシップ製品のヒーローエリアや導入事例、開発ストーリーといった訴求要素は、クリエイティブ領域で自由に構築できます。両者は同一ページ上に共存しながらも混ざり合うことがないため、責任分界が明確になります。

    フレキシブルボディを構成する要素

    実装時に検討すべき主要な要素は、以下の通りです。

    1. ブロックライブラリの標準化
    ヒーロー、スペック表、比較表、動画、事例カード、CTAなど、クリエイティブ領域で使うブロックをあらかじめ定義します。LYZONが支援してきた複数のメーカーサイト構築プロジェクトの実績では、初期は10〜15種類程度が目安となるケースが多く見られます。ブロック数が多すぎると編集者の判断が増え、ページ品質のばらつきにつながるため、「必要になったら追加する」運用を前提にします。なお、適正な数はサイト規模や業種、コンテンツ運用体制によって異なります。
    2. PIM領域とクリエイティブ領域の分離
    PIMから自動表示する領域(自動更新対象)と、フレキシブルボディで編集する領域(手動更新対象)を、管理画面上で明確に分けます。境界をはっきりさせることで、編集者が誤ってPIM由来の情報を書き換える事故を防ぎます。
    3. 標準のブロック構成
    全製品に共通する標準のブロック構成をデフォルトとして用意しつつ、カテゴリ単位・製品単位でカスタマイズできる余地を残します。これにより、量産ページはデフォルトのまま運用し、注力製品のみブロックを組み替える、という運用が可能になります。
    4. 責任範囲の設計
    PIM側の管理者、CMS側の編集者、CMS全体のガバナンスを担う最上位管理者の三者で、どの領域・どのブロックを誰が管理するかを事前に定義します。各国サイトのマーケティング責任者が個別の施策を担う場合も、コンテンツ表現の統制は最上位管理者が担います。責任範囲が曖昧なまま運用を開始すると、更新のたびに調整が発生します。

    導入の順番と落とし穴

    本モジュールを導入する際、順番を誤るとかえって運用負荷が増えます。推奨される進め方は次の通りです。

    1. 現行の製品ページを棚卸しし、「PIM領域で管理する情報」と「クリエイティブ領域で作り込む情報」に分類します。
    2. 分類結果をもとにブロックライブラリを設計し、命名規則と用途を標準化します。
    3. 注力製品カテゴリから段階的に移行し、運用ルールを検証しながら全体展開します。

    落とし穴として多いのは、ブロック数を初期から増やしすぎるケースです。編集者の選択肢が増えるほどブランドとしての統一感が損なわれるため、まずは最小限の構成から始めることが重要です。

    得られる効果

    フレキシブルボディを採用すると、製品情報の正確性はPIM側で担保され、更新作業はPIM側に集約されます。同時に、注力製品ではクリエイティブ領域の自由なブロック構成により、ブランドの世界観や訴求ストーリーを表現できます。

    さらに、PIM領域とクリエイティブ領域で責任範囲が明確に分かれるため、PIM管理部門、Webマーケティング部門、ブランド部門はそれぞれの領域に集中できます。部門間の調整が減ることで、意思決定のスピード向上にもつながります。なお、効果の大きさは組織体制や既存の運用フローによって変わるため、導入前に自社の状況に即した試算を行うことをおすすめします。

    よくある質問(FAQ)

    Q. PIM未導入でも、フレキシブルボディは有効ですか。

    有効です。フレキシブルボディの強みは、ブロックを組み合わせてページごとに表現を変えられる汎用的な表現力にあり、PIM連携に限らず活用できます。PIM未導入の段階でも、手動運用のページをブロック単位で構築することで、ページ制作の標準化とページごとの表現の幅を両立できます。将来的にPIM導入を見据える場合は、あらかじめPIM領域とクリエイティブ領域を分けた構造にしておくことで、PIM連携時の改修範囲を抑えられます。

    Q. ブロックの種類はどの程度から始めるのが現実的ですか。

    初期は10〜15種類程度が目安です。ヒーロー、スペック表、比較表、動画、事例、CTAなど頻出のパターンから定義し、必要に応じて追加していく進め方を推奨します。適正な数はサイト規模や業種によって異なるため、あくまで目安として捉えてください。

    Q. PIM側とCMS側の責任範囲はどのように分ければよいですか。

    一般的には、型番・スペックなどの構造化された製品情報はPIM側、訴求コピー・ビジュアル・事例・ストーリー要素はCMS側で管理します。なお、価格情報についてはPIM自体で管理するケースと、ERPやコマースプラットフォーム(Salesforce Commerce Cloud等)で管理するケースの両方が存在します。採用するPIMの機能範囲とプロジェクト全体のシステム構成によって判断が異なるため、設計初期に確認が必要です。両者が交差するページ内では、PIM領域とクリエイティブ領域を明確に分け、CMS全体のガバナンスを担う最上位管理者が全体を統制する体制を推奨します。

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