「IaaSとPaaS、結局どっち?」を"責任範囲"で判断するチェックリスト

Web制作・開発
2026.01.22
LYZON編集部

「オンプレ、IaaS、PaaS、サーバーレス、SaaS……言葉は聞くけど、結局どう違うの?」Web担当者の方から、こうしたご相談をいただくことはとても多いです。ネット検索をすると図解は出てきますが、実務で迷うポイントはたいてい別にあります。それは “誰が、どこまでて責任を持つか” と、“サーバー代より運用の人件費が効く”という現実です。

本記事では、インフラ形態の違いを「責任を持つ範囲」で整理し、Webサイト/会員サイト/業務Webアプリのように用途が違うと“置き場所”が変わる理由まで、判断できる形にまとめます。

目次

    1.インフラ形態は「面倒を見る範囲の配分」で選ぶ

    オンプレからSaaSまでの方式ごとの違いは一言では表しきれませんが、運用体制の観点に限って言うと、「自社(または委託先)の運用体制として責任を持つ領域がどこまでか」です。

    • オンプレ/データセンター :ハードからOS、監視、バックアップ、障害対応まで“ほぼ全部”自社(または委託先)
    • IaaS(クラウド) :サーバーやネットワーク等はクラウド事業者、OS以上は自社
    • PaaS :OSやミドルウェアの多くを事業者が面倒見る。自社はアプリと設定中心
    • サーバーレス(FaaS/BaaS) :実行環境やスケールを事業者が面倒見る。自社は機能と設計に集中
    • SaaS :アプリケーション自体を利用。自社は運用ルールとデータ、業務適用が中心
    ここで重要なのは、「SaaSに寄るほどラク」という単純な話ではないこと。
    上の図でいうと、右側に行くほどサービス固有の"癖"が強くなり、設計や乗り換えの難しさが増す 傾向があります。

    2. サーバー代より効くのは「運用の人件費」になりがち

    インフラ検討が長引く理由のひとつが「月額コスト比較」で判断しようとすることです。実務では、IaaSやオンプレの運用を回すには、監視、障害対応、セキュリティ運用、バックアップ運用、権限管理などが発生します。しかも、その運用を担える人材は貴重で、体制を組むだけで固定費が重くなりがちです。

    ここでよく起きるのが、次の構図です。

    • サーバー代は思ったより安い
    • しかし運用の人件費(あるいは外注費)が想定以上に高くなる
    • 結果として「運用を減らしたい」→ PaaS/サーバーレスへ関心が寄る
    ポイントは、運用をゼロにするのではなく、運用を“最小化”するという考え方に寄せることです。

    3.PaaS/サーバーレスでも「運用ゼロ」にはならない

    PaaSやサーバーレスは「運用不要」と言われることがありますが、実際はゼロにはなりません。たとえば、次のような“残務”はどうしても残ります。

    • ドメイン設定、SSL証明書まわり
    • アクセス制御(IP制限、認証連携、権限)
    • ログ設計、アラート設計、障害時の切り分け
    • バックアップ方針(データの重要度によって要件が変わる)
    つまり、PaaS/サーバーレスは「運用が消える」のではなく、「面倒を見るポイントが変わる」と理解するのが安全です。OSパッチのような重い運用は薄くなる一方、設定や設計(ログ・権限・通知など)の重要度が上がります。

    4.IaaS→PaaS→サーバーレスほど“個性”が強くなる(=乗り換えに注意)

    IaaSの範囲では、AWS/Azure/GCPの違いは“比較的”吸収しやすいことが多いです。一方で、PaaSやサーバーレス(FaaS/BaaS)の領域に入るほど、各サービスの作法や制約が強くなり、乗り換えにコストがかかりやすくなります 。
    だからこそ、「流行っているからサーバーレス」と短絡的に決めるのではなく、

    • どこをサーバーレスにすると効果が大きいか
    • その部分は将来どのくらい拡張されそうか
    • 事業要件上、制約を許容できるか
    を先に整理しておくと、判断がブレにくくなります。

    5.Webサイト/会員サイト/業務Webアプリで“置き場所”が変わる理由

    同じ会社でも、システムの種類によって「置き場所」の最適解は変わります。

    • Webサイト :更新頻度や重要度次第ではレンタル〜IaaS/PaaSまで幅広い
    • 会員サイト/業務Webアプリ :止まると困る、基幹連携がある、監査がある…などで“基幹寄り”の扱いになりやすい
    特に会員サイトは、単なるWebページではなく「ログイン」「個人データ」「通知」「基幹連携」などが絡むため、要件の重要度が高くなります。このとき、方式選定の判断軸になりやすいのは「コスト」よりも、監視・バックアップ・セキュリティ・連携といった運用要件です。置き場所の議論が迷走する場合は、先にこれらを棚卸しするところから始めると整理が進みます。

    6.迷ったときの実務チェックリスト(最短で方向性を決める)

    最後に、判断を早めるためのチェックリストを置いておきます 。

    A. 運用体制
    • 監視、障害対応、セキュリティ運用を誰が回すか決まっているか
    • 24/365が必要か、営業時間内で許容できるか
    B. セキュリティ・監査
    • ログ保全、権限管理、監査要件はどの水準か
    • 対応できるサービスが限られる必須要件は何か
    C. 連携
    • 基幹や外部SaaSとの連携があるか(認証/データ/API)
    • SSO(SAML/OIDC)が必須か
    D. 変更の頻度
    • UI/UXをどれだけ改善したいか
    • 新機能追加を継続的に回すか

    この4つを押さえるだけで、候補が一気に絞れます。

    インフラ形態の比較は、用語を理解するだけでは決まりません。実際には「運用体制」「セキュリティ・監査」「連携」「将来の拡張」の条件整理が勝負になります。
    もし「自社の条件だとどれが妥当か判断しきれない」「IT部門との合意形成が難しい」といった状況があれば、要件の棚卸し(チェックリスト化)からご支援可能です。

    まずは現状と懸念点だけでもLYZONへご相談ください。

    LYZONでは、WebサイトやWebシステムの特性に応じたインフラ設計・構成検討をご支援しています。
    IaaSとPaaSの違いをふまえて、責任範囲や運用負荷に合った基盤を検討したい方は、下記ページもあわせてご覧ください。
    大規模サイト向けインフラ構築のポイントを見る

    関連サービス:インフラ選定を含めたWebシステム全体の企画・設計・開発について知りたい方は、下記ページもご覧ください。
    LYZONのWebシステム開発の詳細を見る

    インフラ選定に関するよくある質問

    Q1. オンプレ/IaaS/PaaS/サーバーレス/SaaSの違いを、最短で理解するコツは?

    A. 「誰がどこまで面倒を見るか(責任範囲)」で整理するのが一番速いです。オンプレは自社の責任範囲が広く、IaaS→PaaS→サーバーレス→SaaSの順に、運用の重い部分(OSや実行環境など)をサービス側に寄せられます。ただし上に行くほどサービス固有の制約が増えやすいので、要件(監視・セキュリティ・連携)を先に棚卸ししてから選ぶのが安全です。

    Q2. インフラ費用は「月額いくら」で比較すればよいですか?

    A. サーバー代だけで比べると失敗しやすいです。実務では、監視・障害対応・権限管理・バックアップ運用などの運用人件費(または外注費)がコストの大部分を占めることがあります 。IaaS/オンプレは特に運用体制の影響が大きいので、インフラ費+運用費(体制・当番・切り分け)まで含めて比較するのがおすすめです。

    Q3. Webサイトと会員サイトで「置き場所」が変わるのはなぜ?

    A. 会員サイトや業務Webアプリは、止まると困る・個人データを扱う・基幹連携があるなど、運用要件が重くなりやすいからです。結果として「Webだから軽く」では決められず、監視・バックアップ・セキュリティ・連携の要件で置き場所(IaaS/PaaS/サーバーレス等)が決まりやすくなります。