カスタマイズ特化型オープンソースCMS『Drupal』とは?

Web制作・開発
2026.05.21
LYZON編集部

はじめに

LYZONエンジニアの齊藤です。
以前弊社のSitecoreブログにて「開発者観点から見るSitecoreとDrupalの違いについて~その1
(https://sitecore.lyzon.co.jp/techblog/others/20251125_sitecore_vs_drupal_001/)」を執筆させていただきましたが、この度、弊社でもDrupalに関する技術ブログを新たに公開する運びとなりました。 当ブログでは、LYZONが実際にDrupalでのWebサイト構築に携わってきた中で得たノウハウを交え、エンジニアの視点から具体的な技術情報を発信していきます。

Drupalとは?

目次

    Drupalについてざっくり紹介

    DrupalはPHPフレームワークのSymfonyを基盤とした、高い柔軟性を持つCMSです。単なる記事投稿ツール(ブログツール)の枠を超え、「Content Management Framework (CMF)」とも呼ばれる通り、Webアプリケーション開発の土台として機能する堅牢な構造を持っています。
    最大の特長の一つは、オープンソース(OSS)でありながら非常に強固なセキュリティ体制を構築している点です。「Drupalセキュリティチーム」という専属組織が脆弱性を常時監視し、迅速なパッチ提供を行うエコシステムが確立されています。
    (セキュリティチームメンバーのリストはここから見れます:
    https://www.drupal.org/drupal-security-team/security-team-members )

    その信頼性の高さから、NASA(アメリカ航空宇宙局)やホワイトハウスなどの政府機関など、大規模組織で数多く採用されています。
    日本国内においても、デジタル庁の公式サイト(https://www.digital.go.jp/ )がDrupalで構築されているほか、大規模な多言語サイトや複雑な権限管理を必要とするエンタープライズ領域での活用が進んでいます。

    Drupalについてざっくり紹介

    Drupalを使っているサイトは結構ある

    Drupalは海外で圧倒的なシェアを誇るエンタープライズCMSですが、日本国内でもミッションクリティカルな環境を中心に数多く採用されています。
    代表的な事例としては、デジタル庁の公式サイトが挙げられるほか、富士フイルム、三菱重工、三井化学といったグローバル展開を行う大企業、さらには沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの教育・研究機関でもDrupalが活用されています。
    Drupalが選ばれる理由は、単なるコンテンツ管理にとどまらない、以下のような「標準機能の堅牢さ」にあります。

    強固なセキュリティ:
    専属のセキュリティチームによる脆弱性監視体制。

    多言語展開の標準化:
    コア機能として多言語翻訳システムを内包しており、外部API連携も容易。

    ロールベースの高度な権限設定:
    ユーザーごとに「どの項目の読み書きを許可するか」を細粒度に制御可能。

    マルチサイト管理:
    単一のソースコードで複数のサブドメインや別ドメインのサイトを効率的に管理。
    例えば、世界各地の拠点サイトを一括管理する必要があるグローバル企業や、編集者が数百名規模に及び、厳格な承認ワークフローが求められる大規模組織において、Drupalの標準機能は非常に強力な武器となります。
    また、近年のトレンドである「ヘッドレスCMS」としても動作するため、フロントエンドとバックエンドを分離したモダンなアーキテクチャへの移行もスムーズです。デジタル庁のような将来的な拡張性とアクセシビリティの両立が求められるプロジェクトにおいて、この柔軟性は大きな選定理由の一つとなっていると考えられます。

    Sitecore同様、複雑なビジネスロジックをCMS上で実現したい場合に、DrupalはOSSの中で最も有力な選択肢になります。

    どんな機能がある?

    Drupalは、その設計思想から「Content Management Framework(CMF)」とも呼ばれるほど拡張性が高く、要件次第で多様なシステムを実現できます。
    アーキテクチャの基本は、最小限の機能を持つ「Core(コア)モジュール」を核とし、そこにコミュニティが提供する「Contrib(コントリビュート)モジュール」や自作の「カスタムモジュール」を掛け合わせることで、機能を積み上げていくスタイルです。Drupalの基本機能になければ、追加のモジュールを導入してサイト機能を実現していく、という感じです。
    開発者として特に注目すべき主要な機能を3つ紹介します。

    ① フィールドシステム(柔軟なデータ構造)

    Drupalの最大の特徴は、コードを書かずにGUI上で複雑なデータ構造(エンティティ)を定義できる点です。

    エンティティとフィールド:
    記事(ノード、コンテンツ)だけでなく、ユーザーやカスタムブロックなど、あらゆる要素に「テキスト」「画像」「参照(エンティティリファレンス)」「日付」などのフィールドを自由に追加できます。

    再利用性:
    一度定義したフィールド設定を複数のコンテンツタイプで共有できるため、サイト全体でデータの一貫性を保ちやすくなっています。

    ② ビュー(Views: 強力なクエリ・ビルダー)

    SQLを書かずに、管理画面上でデータベースからコンテンツを抽出・表示できる強力な機能です。

    柔軟なフィルタリング:
    「特定のカテゴリに属し、公開済みで、かつ特定の日付以降の記事を最新順に表示する」といった複雑な抽出がGUIで完結します。

    多様な出力形式:
    HTMLのリストだけでなく、JSON(REST API)としての出力も容易で、ヘッドレス構成の際にも重宝します。

    エンジニア向けの拡張性:
    必要に応じて、カスタムモジュールから hook_views_query_alter() 等を用いてSQLを動的に書き換えることも可能です。直接クエリを投げるのではなく、DrupalのAPI(EntityQuery等)やViewsを介することで、キャッシュの最適化や権限チェックが自動的に適用されるのが大きなメリットです。

    ③ パラグラフ(Paragraphs: コンポーネント指向の編集体験)

    モダンなWebサイト制作に欠かせない「ブロックエディタ」的な機能を実現する代表的なモジュールです。

    自由度の高いレイアウト:
    「画像+テキスト」「動画」「スライダー」といったパーツ(パラグラフタイプ)を、ページ内でパズルのように組み合わせてコンテンツを構築できます。

    構造化データの維持:
    見た目の自由度が高い一方で、データ自体は構造化されて保存されます。そのため、将来的なデザイン変更や、他システムへのデータ連携にも強いのが特徴です。

    LYZONでの活用:
    弊社ではパラグラフタイプをコンポーネント単位で詳細に設計・作成することで、運用者が迷わず、かつ自由なレイアウトで更新できる環境を提供しています。

    どんな機能がある?

    Sitecoreとの違いは?

    当社がメインで取り扱っているSitecoreと、今回ご紹介しているDrupal。どちらもエンタープライズ領域で選ばれるパワフルなCMSですが、その設計思想には興味深い違いがあります。エンジニアの視点で、主要な3つのポイントを比較してみます。

    ① 技術スタックとエコシステム

    Sitecore:
    .NET Framework / .NET Coreを基盤とした、堅牢な商用プラットフォームです。メーカーによる統合的なサポートと、マーケティング機能(CDP、パーソナライズ等)が密接に統合されているのが特徴です。

    Drupal:
    PHP / Symfonyを基盤としたオープンソース(OSS)です。世界中の開発者が作成した「寄稿モジュール:コントリビュートモジュール」を組み合わせるスタイルで、PHPエコシステムの最新技術を柔軟に取り込める身軽さがあります。

    ② 「拡張」のメカニズム:パイプライン vs フック・サービス

    カスタマイズの作法にも違いがあります。

    Sitecore:
    処理のプロセスが「パイプライン」として細分化されており、特定のステップにプロセッサを注入することで挙動を変更します。非常に厳格で予測可能性の高い拡張が可能です。

    Drupal:
    伝統的な「Hook(フック)」システムと、Symfony譲りの「Serviceのオーバーライド」や「EventSubscriber」を組み合わせて拡張します。システム内のあらゆるイベントに介入できる自由度の高さが魅力です。

    ③ データの持ち方と自由度

    Sitecore:
    コンテンツは「アイテム」としてツリー構造で管理され、レイアウト詳細(Rendering)と密結合することで、強力なビジュアル編集(エクスペリエンスエディター等)を実現しています。

    Drupal:
    データは「エンティティ」として高度に正規化されており、見た目(テーマ)とデータが明確に分離されています。そのため、今回触れたような「ヘッドレス構成」への切り替えや、APIを介した他システム連携が非常にスムーズに行えます。

    どちらを選ぶべきか?
    エンジニアとして両者に触れて感じたのは、「マーケティングの統合スイート」としてのSitecoreと、「高度なコンテンツ基盤(フレームワーク)」としてのDrupalという役割の違いです。

    顧客体験のパーソナライズを最優先するなら、Sitecoreの統合環境が強力な武器になります。
    膨大なコンテンツの構造化や、外部システムとの頻繁なAPI連携、開発のスピード感を重視するなら、Drupalの柔軟性が大きなメリットをもたらします。

    Sitecoreとの違いについては、以前に以下の記事でまとめているのでこちらも併せてご確認ください。
    https://sitecore.lyzon.co.jp/techblog/others/20251125_sitecore_vs_drupal_001/

    Sitecoreとの違いは?

    おわりに

    以上、ちょっと長くなってしまいましたがエンジニア観点での「Drupalについて」を記載させていただきました。
    引き続き、今後もDrupalについての技術情報ブログを発信していきますので、どうぞよろしくお願い致します。

    ※エントリーの内容・画像等は、公開時点での情報に基づきます。
    ※Drupalのバージョンによって実装されている機能が異なります。