2019/10/17

キャッチ画像

フォルダーにあふれる似た名前のファイル…。どれが最新のファイルか分からなくなってしまうこと、ありませんか?

「バージョン」と言うと、デザイナーやエンジニアなど、技術者が使うためのものだと思う方もいらっしゃるかもしれません。デザイナーの私も、業務ではほぼ日常的に使用しています。しかしバージョンという概念は、知っておけばディレクターや営業の方にとても役に立つノウハウとなるでしょう。ファイルやフォルダーにも「バージョン」を導入することができれば、今までよりさらに効率の良い書類管理ができるとともに、どのファイルが最新か分からなくなるトラブルから開放されるようにります。

今回は、営業やディレクターにも役立つバージョンの付け方を、分かりやすくご紹介します。


なぜバージョンが必要なのだろう

たとえば、お客さまとやり取りする設計書を例にとって説明しましょう。設計書はなかなか一度で承認されることはなく、作成・提出したあと、お客さまとの間で何度も確認、修正の流れを繰り返すことになります。

しかし、そのときどきの決定事項や仕様変更の履歴などを遡れるようにするため、過去に作成した書類もエビデンスとして残さなければなりません。このとき、元の書類から複製した新しい書類に相対的な名前を付けてしまうと、どれが最新か分からなくなってしまいます。

  • 画面設計書.xlsx
  • 画面設計書_old.xlsx
  • 画面設計書_山田.xlsx
  • 画面設計書_更新.xlsx
  • 画面設計書_最新版.xlsx
  • 画面設計書_検収済.xlsx
  • 画面設計書_納品.xlsx
  • 画面設計書_編集中 のコピー.xlsx
  • 画面設計書_編集中.xlsx

先方とのやり取りでどんどんファイルが増えていく図

 

確認ごとにデータが残っているため、個々の変更履歴は残っていますが、ファイル名がバラバラになってしまっているせいで、第三者が見ても到底理解できない管理になってしまっています。

そこで、ある規則にしたがって絶対的な番号を付与することで、前後関係を明確にさせたり、前のファイルと比べてどのくらいの変更が加わったのか、または何回更新されたのか、すぐに分かるようになります。その規則こそが、今回紹介する「バージョン」です。


バージョンとは

辞書で「バージョン」という言葉を引いてみます。

ソフトウェアや書類などを改訂していく際に、 改訂の段階を表すために付けられる番号
ASCII.jpデジタル用語辞典

このように番号と記されています。番号とはすなわち数字になるわけですが、なぜアルファベットや"いろは"ではダメなのでしょうか。それは、アルファベットも"いろは"も数が有限だからです。A, B, C,...とはじまり、...X, Y, Zまでしかバージョンを作ることができません。"いろは"も同様ですが、そもそもパソコン上では50音順に並びますので、順番通りに並ばなくなってしまいます。数字であれば、無限に増やしていくことが可能です。


身近にあるバージョン

私たちの身の回りには、バージョンで溢れています。

さまざまなサービスのバージョン情報

 


バージョンの使いどころ

ではバージョンはどういったところにつければ良いのか、ということを耳にします。

これの答えとしては、「好きなところにつけよう」です。付ける場所より、付ける方法(ルール)のほうが大事なのです。

弊社の場合、次のような場所にバージョンを表記しています。

  • 提案書や設計書などの書類
  • Gitのリリースタグ

OneDriveやDropboxなどクラウド管理されているものは、自動で保存されいつでも過去のデータにアクセスできるため、バージョン管理が不要かもしれません。


バージョンの付け方

実はバージョンの付け方は、法則さえ統一すればどんな方法でも構いません。ただ、ある一定のルールを知っておいたほうが、はるかに使いこなすのがはやくなるでしょう。ここでは、セマンティック バージョニング 2.0 というアイデアを元にしたX.Y.Z記法を覚えましょう。

X.Y.Z記法の読み方と例

バージョンは「XてんYてんZ」というふうに読みます。さてここで、"てん"が2個以上でてきました。バージョンを初学者にとって間違いやすいのは、この"てん"を小数点と思ってしまうことです。バージョン表記で使う"てん"は各バージョンの区切りの記号であり、小数点ではありません。

  • 1.3.2…いち/てん/さん/てん/に
  • 10.16.4…じゅっ/てん/じゅうろく/てん/よん
  • 67.859.4032…ろくじゅうなな/てん/はっぴゃくごじゅうきゅう/てん/よんせんさんじゅうに

状況によって、2桁以上の数字を1桁読みする場合があります:1.15.3…いち/てん/いちご/てん/さん

西暦の年月日2020.7.8もバージョンとして使えそうですが、不定期に更新されるファイルなどには適しません。定期的に更新されるファイル(たとえば月報や社内報など)などに限定して使うべきでしょう。

各バージョンの意味

  • X: メジャーバージョン 見た目や操作性に影響を及ぼすような大きな変更やページの追加など
  • Y: マイナーバージョン 細かな機能向上や部分的な情報の追加やページの修正など
  • Z: パッチバージョン バグ修正や誤字脱字の訂正など

バージョンを表す記法

これといった決まりはありませんが、バージョンを表すのに以下のような記法が一般的です。ver.の点は省略記号ですから、忘れずに付けましょう。

  • version 1.2.3
  • ver. 1.2.3
  • v1.2.3

記述のポイント

各バージョンを上げるときは、0, 1, 2, ... のように1ずつ上げ、欠番しないようにします

  • 例1:現在のバージョンが1.0.1で、バグ修正をした場合、次のバージョンは1.0.2となる
  • 例2:現在のバージョンが3.1.6で、バグ修正をした場合、次のバージョンは3.1.7となる

ヒント:もし欠番があると、第三者は抜けたバージョンを探すのに必死になってしまいます。

各バージョンを上げるときは、上位のバージョンに繰り上げず、当該バージョンのみを9, 10, 11, 12...のように上げます

  • 例1:現在のバージョンが1.9.9で、バグ修正をした場合、次のバージョンは1.9.10となる
  • 例2:現在のバージョンが4.0.99で、バグ修正をした場合、次のバージョンは4.0.100となる

ヒント:バージョンで使う点「.」は小数点ではありません。この誤解は、とくにv3.9のようなX.Yバージョン表記のときに起こりやすくなります。v3.9の次はv4.0ではなく、v3.10となります。

上位のバージョンが上がると下位のバージョンは0にリセットします

  • 例1:現在のバージョンが2.1.5で、大きな追加をした場合、次のバージョンは3.0.0となる
  • 例2:現在のバージョンが10.14.6で、小さな変更をした場合、次のバージョンは10.15.0となる

ヒント:メジャーが0のときは開発版であることが多い

ゼロパディングは入れないでください

10.01.2のような表記はせず、10.1.2のように書きましょう

ヒント:ゼロパディングとは…上位の桁と見た目上の桁数を揃えるために、下位の桁の頭にゼロを挿入する手法 例:5:1⇔05:01

バージョン0を省略するかは要検討

iOSのバージョンは、13.1の次が13.1.1となっています。このように、サービスによってはバージョン0を省略するところもあります。ただし、慣れないうちは記法を変えることは控えたほうが良いでしょう。現在のバージョンが3.14.5でマイナーバージョンを上げたいとき、パッチバージョンが0になるからといって3.15と省略せず、3.15.0としましょう。


練習問題

記述のポイントを覚えられたでしょうか。以上のルールを守れば、どんなバージョン表記でも読み書きできるようになるでしょう。次に、練習問題を実践してより理解を深めましょう。

練習問題

問{{index + 1}} 現在のバージョンが{{question.current}}で、{{question.level}}バージョンがあがる場合、どちらが適切か。

正解です!

正解は{{question.answer}}でした
{{question.explanation}}

{{recents.length}}問中{{score}}問正解

同じ問題をもう一度解く 違う問題を解く


まとめ

ここまで覚えてきたX.Y.Z記法をおさらいしましょう。

  • X: メジャーバージョン 大きな変更やページの追加
  • Y: マイナーバージョン 小さな変更やページの修正
  • Z: パッチバージョン バグ修正や誤字脱字の訂正

ここまで覚えてきた記述のポイントをおさらいしましょう。

  • 欠番させない
  • 上位のバージョンに繰り上げない
  • 上位のバージョンが上がると下位のバージョンは0にリセットする
  • ゼロパディングは入れない

豆テスト

以下のファイルは、弊社の研修で実際に使用した試験用紙です。CC BY-SA 3.0ライセンスのもとで配布しておりますので、ご利用ください。

豆テストをダウンロードする(Word文書形式・回答あり)

佐々木

佐々木 Webデザイナー

2014年入社。安定感や清潔感のあるデザインが得意。CMSに導⼊しやすい効率的かつ保守性の⾼いマークアップができ、デザイナーながらフロントエンドの技術も有する。
旅と写真が好きだが、地図を眺めていて1日が終わることがよくある。