先にアプリを作ってしまった小売企業があとからCMS連携するまでの「現実的なリカバリ手順」

Web制作・開発
2026.01.06
LYZON編集部

「店舗アプリはもうあります。
 でも運用してみたら、“Webと連動できないと困る”ことにようやく気付きました。」

こうしたご相談をいただくことが、実務では少なくありません。

  • 先にアプリを公開して、会員証・クーポン配信をスタートした
  • しばらく運用する中で、「Webサイトの情報とアプリの情報を揃えたい」というニーズが高まった
  • 気付いた頃には、Webとアプリでの二重登録や、更新漏れが大きな負担になっていた

本記事では、すでにアプリが存在する前提で、「今からCMS連携をしていく」ための現実的なステップを、
ある小売企業(以下「小売店A社」)の事例をベースにご紹介します。

目次

    小売店A社の状況 ― 先にアプリを出した結果、二重登録が限界に

    小売店A社は、全国に店舗を持つチェーン企業です。
    数年前に「店舗アプリ」をリリースし、

    • デジタル会員証
    • 来店ポイント
    • アプリ限定クーポン

    などを中心に、来店促進の施策を進めていました。
    一方で、Webサイト側ではすでに、

    • CMSによるお知らせ更新
    • キャンペーン情報やチラシの掲載
    • ブランドコンテンツやコラム記事

    といった運用が走っていました。

    当初は、
    「アプリはアプリで、Webとは別物として運用すればよい」
    と考えていたため、

    • Webサイト:CMSでお知らせ・キャンペーンを更新
    • アプリ:アプリ用の管理画面で、同じ内容を再入力

    という二重登録の運用を続けていました。
    しかし2〜3年運用するうちに、

    • 更新の手間が単純に二倍かかる
    • Webだけ更新してアプリを忘れる、あるいはその逆が起きる
    • 「アプリとWebで内容が違う」とお客様から指摘される

    といった問題が顕在化してきたのです。

    まず「今どう運用しているか」を正直に棚卸しした

    そこでA社は、アプリ改修・CMS連携を検討する前に、
    現状の運用をすべて棚卸しすることから始めました。

    特に洗い出したのは、次のようなポイントです。

    • どの情報を、どこで更新しているか
      • Webサイトのお知らせ/キャンペーン → CMS
      • アプリのお知らせ/クーポン情報 → アプリ用管理画面
      • 一部の固定文言 → アプリのコードに直接埋め込まれている
    • Webとアプリの両方で、同じ内容を登録している箇所はどこか
    • 更新頻度が高いのはどの情報か
      • 週替わりのキャンペーン
      • セール・フェア情報
      • 店舗限定企画のお知らせ
    • 誰が更新作業をしているか
      • Web担当チーム
      • アプリ担当チーム
      • 店舗販促担当からの依頼を受ける本部スタッフ

    ここでわかったのは、
    「頻繁に更新されるコンテンツほど、Webとアプリの二重登録になっている」
    という状況でした。

    「今すぐCMSに寄せられるもの」から順に整理した

    棚卸しの結果をもとに、A社はすべてのコンテンツを次の2つに分類しました。

    1. 今すぐCMSに寄せられそうなもの
      • すでにWebサイトのCMSで管理している
      • アプリ側にも「ほぼ同じ内容」を登録している
      • データ構造もシンプルなニュース・キャンペーン系
    2. 時間をかけて移行するもの
      • アプリ専用の画面設計と強く結びついているもの
      • 会員情報やポイント残高など、既存の基幹システムと深く連動しているもの
      • 画面ごと見直しが必要なもの

    その結果、①に分類されたのは主に次のような情報でした。

    • お知らせ・ニュース(新サービス、営業時間変更、システムメンテナンスなど)
    • キャンペーン・フェア情報
    • アプリのトップ画面に載せているバナー・告知枠

    ここでA社は、「すべてを一気に統合する」のではなく、

    まずは①の“コンテンツ寄り”の情報だけでも、
    CMSをマスタにしてアプリにも配信する

    という方針に切り替えました。

    最小限の改修で「二重登録」から抜け出すステップ

    方針が決まったところで、A社が実際に行ったステップは次の通りです。

    ステップ1:CMS側に「アプリ向けの出力口」を作る

    • 既存のCMS上で管理している
      • お知らせ
      • キャンペーン
      • バナー情報
      に対して、「アプリにも出す」ためのフラグやカテゴリを追加しました。
    • 併せて、アプリから取得しやすい形で
      • JSON API
      • もしくはアプリ向けの専用フィード
      • を用意しました。

    これにより、 「同じコンテンツをWeb・アプリ両方に出したい場合、CMSの“アプリ表示”にチェックを入れればよい」
    という状態を作りました。

    ステップ2:アプリ側で“裏側のデータソース”だけ切り替える

    次に、アプリ側の改修です。

    • これまで、アプリの管理画面やアプリ内の固定データから取得していた
      • ニュース一覧
      • トップバナー
      • などを、
      • CMSのAPIを叩いて取得する
      ように裏側の仕組みを切り替えました。
  1. 画面そのもののデザインや導線は、ユーザーの混乱を避けるため、基本的に変えませんでした。
    「見た目はそのまま、中身の出どころだけ変える」 という方針です。
  2. ステップ3:古い更新ルートを閉じるルールを徹底した

    最後に、運用ルールと社内の動きも見直しました。

    • アプリ専用管理画面で行っていたニュース・キャンペーン更新機能を段階的に停止
    • 運用マニュアルを更新し、
      • 「ニュース・キャンペーン・バナーの更新はCMSからのみ」
      • 「アプリ側での直接更新は禁止」
      • というルールを明文化
    • 店舗向けの連絡でも、
      • 「告知を出したいときは、Webサイトのお知らせ依頼フローに乗せる」
      という一本化を行いました。

    こうして、「同じ内容をWebとアプリで二度入力する」状況を、現場レベルから減らしていきました。

    結果として、何が変わったのか

    この取り組みの結果、A社では次のような変化がありました。

    • Web・アプリのコンテンツ更新にかかる時間が、体感で3〜4割ほど削減された
    • 「Webとアプリで内容が違う」というお客様からの指摘がほとんどなくなった
    • 本部側の担当者が、
      • 「まずCMSに正しい情報がある状態を作る」
        ことを意識するようになり、コンテンツの品質も安定
    • アプリの改修は、
      • 新機能追加
      • クーポン施策の強化
      • など「アプリならではの部分」に集中できるようになった

    特に、「更新作業の窓口が一本化された」ことにより、
    「どこを直せばいいのか分からない」というストレスが減った
    という現場の声があったのが印象的でした。

    すべてを一気にやろうとしないことが、むしろ成功のカギだった

    A社のプロジェクトで特徴的だったのは、
    「理想の姿」すべてを、一度に実現しようとしなかった
    ことです。

    • 会員情報やポイントの仕組みは、基幹システムとの関係が複雑である
    • ログインやIDまわりは、影響範囲が大きい

    といった理由から、これらは第二フェーズ以降の検討テーマと割り切りました。

    その代わりに、

    • 更新頻度が高く
    • Webとアプリの両方に掲載したいコンテンツで
    • データ構造が比較的シンプルなもの

    に絞って「CMSマスタ化」を先行させたことで、

    • プロジェクトが現実的な規模に収まった
    • 早い段階で目に見える効果(工数削減・ミス減少)が得られた

    というメリットがありました。

    まとめ:今あるアプリを活かしながら、「CMSマスタ」に近づけていく

    小売店A社の事例のように、

    • すでにアプリを持っていて
    • CMSもある程度導入済みで
    • でも両者がうまく連動していない

    という状況は、少なくありません。
    その際に大切なのは、

    • すべてを作り直そうとするのではなく
    • 現状の運用を棚卸しし
    • 「今すぐCMSに寄せられるコンテンツ」から順に移行していく

    という段階的なリカバリの発想です。

    「うちも、まさにA社と似た状況かもしれない」
    「どこから手を付ければよいか一緒に整理してほしい」

    という場合は、
    まずは「どのコンテンツをどこで更新しているか」を簡単な表にしていただくだけでも十分です。
    そこから、A社のように少しずつ「CMSマスタ+アプリはクライアント」という形に近づけていく道筋をご提案できます。