先にアプリを作ってしまった小売企業があとからCMS連携するまでの「現実的なリカバリ手順」
「店舗アプリはもうあります。
でも運用してみたら、“Webと連動できないと困る”ことにようやく気付きました。」
こうしたご相談をいただくことが、実務では少なくありません。
- 先にアプリを公開して、会員証・クーポン配信をスタートした
- しばらく運用する中で、「Webサイトの情報とアプリの情報を揃えたい」というニーズが高まった
- 気付いた頃には、Webとアプリでの二重登録や、更新漏れが大きな負担になっていた
本記事では、すでにアプリが存在する前提で、「今からCMS連携をしていく」ための現実的なステップを、
ある小売企業(以下「小売店A社」)の事例をベースにご紹介します。
目次
小売店A社の状況 ― 先にアプリを出した結果、二重登録が限界に
小売店A社は、全国に店舗を持つチェーン企業です。
数年前に「店舗アプリ」をリリースし、
- デジタル会員証
- 来店ポイント
- アプリ限定クーポン
などを中心に、来店促進の施策を進めていました。
一方で、Webサイト側ではすでに、
- CMSによるお知らせ更新
- キャンペーン情報やチラシの掲載
- ブランドコンテンツやコラム記事
といった運用が走っていました。
当初は、
「アプリはアプリで、Webとは別物として運用すればよい」
と考えていたため、
- Webサイト:CMSでお知らせ・キャンペーンを更新
- アプリ:アプリ用の管理画面で、同じ内容を再入力
という二重登録の運用を続けていました。
しかし2〜3年運用するうちに、
- 更新の手間が単純に二倍かかる
- Webだけ更新してアプリを忘れる、あるいはその逆が起きる
- 「アプリとWebで内容が違う」とお客様から指摘される
といった問題が顕在化してきたのです。
まず「今どう運用しているか」を正直に棚卸しした
そこでA社は、アプリ改修・CMS連携を検討する前に、
現状の運用をすべて棚卸しすることから始めました。
特に洗い出したのは、次のようなポイントです。
- どの情報を、どこで更新しているか
- Webサイトのお知らせ/キャンペーン → CMS
- アプリのお知らせ/クーポン情報 → アプリ用管理画面
- 一部の固定文言 → アプリのコードに直接埋め込まれている
- 週替わりのキャンペーン
- セール・フェア情報
- 店舗限定企画のお知らせ
- Web担当チーム
- アプリ担当チーム
- 店舗販促担当からの依頼を受ける本部スタッフ
ここでわかったのは、
「頻繁に更新されるコンテンツほど、Webとアプリの二重登録になっている」
という状況でした。
「今すぐCMSに寄せられるもの」から順に整理した
棚卸しの結果をもとに、A社はすべてのコンテンツを次の2つに分類しました。
- 今すぐCMSに寄せられそうなもの
- すでにWebサイトのCMSで管理している
- アプリ側にも「ほぼ同じ内容」を登録している
- データ構造もシンプルなニュース・キャンペーン系
- 時間をかけて移行するもの
- アプリ専用の画面設計と強く結びついているもの
- 会員情報やポイント残高など、既存の基幹システムと深く連動しているもの
- 画面ごと見直しが必要なもの
その結果、①に分類されたのは主に次のような情報でした。
- お知らせ・ニュース(新サービス、営業時間変更、システムメンテナンスなど)
- キャンペーン・フェア情報
- アプリのトップ画面に載せているバナー・告知枠
ここでA社は、「すべてを一気に統合する」のではなく、
まずは①の“コンテンツ寄り”の情報だけでも、
CMSをマスタにしてアプリにも配信する
という方針に切り替えました。
最小限の改修で「二重登録」から抜け出すステップ
方針が決まったところで、A社が実際に行ったステップは次の通りです。
ステップ1:CMS側に「アプリ向けの出力口」を作る
- 既存のCMS上で管理している
- お知らせ
- キャンペーン
- バナー情報
- 併せて、アプリから取得しやすい形で
- JSON API
- もしくはアプリ向けの専用フィード を用意しました。
これにより、
「同じコンテンツをWeb・アプリ両方に出したい場合、CMSの“アプリ表示”にチェックを入れればよい」
という状態を作りました。
ステップ2:アプリ側で“裏側のデータソース”だけ切り替える
次に、アプリ側の改修です。
- これまで、アプリの管理画面やアプリ内の固定データから取得していた
- ニュース一覧
- トップバナー などを、
- CMSのAPIを叩いて取得する
「見た目はそのまま、中身の出どころだけ変える」 という方針です。
ステップ3:古い更新ルートを閉じるルールを徹底した
最後に、運用ルールと社内の動きも見直しました。
- アプリ専用管理画面で行っていたニュース・キャンペーン更新機能を段階的に停止
- 運用マニュアルを更新し、
- 「ニュース・キャンペーン・バナーの更新はCMSからのみ」
- 「アプリ側での直接更新は禁止」 というルールを明文化
- 「告知を出したいときは、Webサイトのお知らせ依頼フローに乗せる」
こうして、「同じ内容をWebとアプリで二度入力する」状況を、現場レベルから減らしていきました。
結果として、何が変わったのか
この取り組みの結果、A社では次のような変化がありました。
- Web・アプリのコンテンツ更新にかかる時間が、
体感で3〜4割ほど削減 された - 「Webとアプリで内容が違う」というお客様からの指摘がほとんどなくなった
- 本部側の担当者が、
- 「まずCMSに正しい情報がある状態を作る」
ことを意識するようになり、コンテンツの品質も安定
- 「まずCMSに正しい情報がある状態を作る」
- アプリの改修は、
- 新機能追加
- クーポン施策の強化 など「アプリならではの部分」に集中できるようになった
特に、「更新作業の窓口が一本化された」ことにより、
「どこを直せばいいのか分からない」というストレスが減った
という現場の声があったのが印象的でした。
すべてを一気にやろうとしないことが、むしろ成功のカギだった
A社のプロジェクトで特徴的だったのは、
「理想の姿」すべてを、一度に実現しようとしなかった
ことです。
- 会員情報やポイントの仕組みは、基幹システムとの関係が複雑である
- ログインやIDまわりは、影響範囲が大きい
といった理由から、これらは第二フェーズ以降の検討テーマと割り切りました。
その代わりに、
- 更新頻度が高く
- Webとアプリの両方に掲載したいコンテンツで
- データ構造が比較的シンプルなもの
に絞って「CMSマスタ化」を先行させたことで、
- プロジェクトが現実的な規模に収まった
- 早い段階で目に見える効果(工数削減・ミス減少)が得られた
というメリットがありました。
まとめ:今あるアプリを活かしながら、「CMSマスタ」に近づけていく
小売店A社の事例のように、
- すでにアプリを持っていて
- CMSもある程度導入済みで
- でも両者がうまく連動していない
という状況は、少なくありません。
その際に大切なのは、
- すべてを作り直そうとするのではなく
- 現状の運用を棚卸しし
- 「今すぐCMSに寄せられるコンテンツ」から順に移行していく
という段階的なリカバリの発想です。
「うちも、まさにA社と似た状況かもしれない」
「どこから手を付ければよいか一緒に整理してほしい」
という場合は、
まずは「どのコンテンツをどこで更新しているか」を簡単な表にしていただくだけでも十分です。
そこから、A社のように少しずつ「CMSマスタ+アプリはクライアント」という形に近づけていく道筋をご提案できます。
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