文字数でガラリと変わるキャッチコピー

キャッチコピーを考えるとき、何に注目して考えていますか。

ターゲットでしょうか、情報量でしょうか、興味を引くための特徴的なキーワードでしょうか。
そのどれも正解だと思います。多くの事柄を複合的に考えて作り出される売り文句、それがキャッチコピーです。

では今回はそことはまた少し別、キャッチコピーの文字数について着目し考えていきましょう。

文字数で受ける影響

文字数について考えるってどういうことだ、と考えた際に真っ先に出てくる事柄がこれだと思われます。

  • 長いキャッチコピーで分かりやすく、そして具体的な印象を与えるか。
  • 短いキャッチコピーで素早く、そして強烈な印象を与えるか。

どちらを選択し思案していくかは、キャッチコピーを考えるまず第一歩といっても過言ではないかもしれません。

しかし、その文字数にまで着目することはあまりないのではないでしょうか。
長ければいいというわけでも、短ければいいというわけでもありません。
キャチコピーに明確な「答え」があるわけではないので、自論となりますがキャッチコピーに使用され、そして目に馴染む文字数というものがあります。

キャッチコピーとは何か、と考えた際に私は「言葉をまとめて、一つの物事を印象深く伝えるもの」という風に考えました。

これは日本の伝統芸能でもある「俳句」や「川柳」に連なるものがあります。
多くの「言葉」の中から最適な表現が可能な「言葉」を選び、17文字の「詩」にする。その工程はキャッチコピーと俳句とでは大きな差はありません。

ではなぜキャッチコピーではこの文字数というものが重要視されていないのか。
それは文字数のまとまりについて知らないから、なのではないでしょうか。

日本語の仕組み解説

ここでは日本語とはどういう作りなのかを少し掘り下げます。
日本語で会話をする際、その最小単位は2音であり、そこから2音を繰り返し4音、さらに繰り返して8音の音で日本語の会話というものはまとまっています。

50音の中から1音だけで構成される会話というものはありません。
何かに気づいた時の「あ」という驚きの声でさえ、実際には「あっ」と促音が発生しています。

その2音が倍になり4音となりますが、これは2音が2つ組み合わさったという事以上に大きな意味を持ちます。
日本語アクセント辞典では日本語の音の数が表されていますが、実際に何音の単語が多いかを見ると4音の日本語が最も多くあるという事がわかります。

また、略語をみても4音というものは特殊であることがわかることでしょう。
「アメフト」「学割」「ラジコン」などの略語を見ると4音の単語に略されていることが多いはずです。
果てには「プレミアム」という単語を「プレミア」と略してさえいます。5音から4音とほとんど変わらないはずですが4音の方が言いやすく、聞きやすいのではないでしょうか。
2音と2音が合わさってできた4音は、強固な枠組みとして成り立つために、安定感のある単語でとなります。

2音の音でまとまり、4音で安定し、それでは8音とはどういうものなのでしょう。
ずばり、8音こそが日本語の最大単位とも呼べるものとなります。
広辞苑で調べた際、音数の上で最も長い単語は何か、知っておりますでしょうか。

「竜宮の乙姫の元結の切り外し(リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ)」

という21文字20音が最長の日本語になります。しかしこの単語を読もうとしたときに、一つの単語として理解できないはずです。
「竜宮の」「乙姫の」「元結の」「切り外し」と複数の単語の集合体として認識したと思います。

このように「複数の単語の集合」ではなく「一つの日本語」として認識できる最大の文字数というものが8音というわけです。

2音、4音、8音の3つこそが日本語の文章を構成する際に重要になるポイントのひとつなのです。

五七五が選ばれたワケ

俳句や川柳、短歌でこの五七五が選ばれている理由を考えていましょう。
5音と7音どちらも前項であげた3つの音には含まれていません。
2音、4音、そして8音の音が重要ならばその音が俳句や短歌に採用されて然るべきなのではないでしょうか。

その疑問を解く鍵は「休止」にあります。
日本語には句読点というものが存在しています。それは文章を読みやすいように区切りをつけるためでも、重要なところを強調するためにも使用されるものです。
それは俳句や短歌にも同様に存在します。

結論から言うと、俳句は8音、8音、8音の合計24音で作成されています。
ただ、実際に耳に入ってくる音が17音というだけであり、24音と17音の差である7音が俳句でいうところの「休止」となるわけです。

5音の前後に3音分の休止があり、7音の前後に休止があり、5音の前後に休止がある。
そうやってできあがったものが17音の詩となるわけです。
この休止があることにより、俳句はリズミカルに聞こえる音律となるのです

最適なキャッチコピーの音律は……?

結論から言ってしまえば、こちらに答えはありません。
俳句では明確に五七五の17音と決まってはいるものの、同じく文字数を制限して作られる日本詩の世界では、俳句に倣った七五調のものから、八五調、果ては八八調の詩まであります。これはどの形がより印象に残るかを試行錯誤した証であり、それでもなお一番はこれだという結論が出なかったものです。

キャッチコピーもまた同様に八五調や七五調で練られたものもあれば、音律を考えずに作り出されたものもあります。

正解がない、ということは全てが正解である、ということでもあるのです。
だからこそ本記事では、キャッチコピーはかくあるべきだ、などというナンセンスなことは言うつもりはありません。

ちなみに本記事の目次はどれも七五調で作成しました。それぞれ読んでいてどのように感じましたでしょうか。
少しでも頭に入りやすいと感じていただいたのなら、嬉しい限りです。
そうでもない、と感じう場合もあるかと思いますが、それは当たり前です。
五七五の形さえしていれば文が等しく受け取りやすい、と感じるようになるというわけではないのですから。

今回の記事でご紹介した音律は、こうすれば絶対に良いキャッチコピーになる、というものでは全くないのです。

もう少しだけ受け手の印象を良くしたいけど、改善点が分からない。
そんな時にこそ、この文字数を考えてみてはいかがでしょうか。

些細な文末の変更だけでも、印象というものは大きく変わることもありますので。

田中

田中 Webディレクター

2019年入社。主に構築の案件を担当している。
完全なインドア派で、小説は読むのも書くのも好き。