着ぐるみの視点に立ってみた:視点を変えて考える力を鍛える
こんにちは。Webディレクターの森岡です。
Webディレクターが持つべきスキルは多岐に渡りますが、「顧客目線に立てること」も重要な要素の一つです。技術的な事柄を顧客に分かりやすく伝えるにはどうすべきか、顧客が本当に求めていることは何なのか。真に汲み取る・伝えるためには「相手の立場になってみる」ことが重要だと思っています。
そこで・・・「相手の立場になってみる」訓練として、「私が着ぐるみになったら?」と想像してみました。求められるスキルや必要なトレーニングなど、私がこれから着ぐるみの中の人として生きていくために必要なことを具体的に想像しながら考えてみます。
目次
どの着ぐるみの中の人になるか
私は愛知県出身で、スポーツ観戦を趣味としています。そこで、私的に馴染み深く想像しやすい、Jリーグ・名古屋グランパスのキャラクター「グランパスくん」になりきってみます。
グランパスくんはシャチを模したオスのキャラクターという設定。主な活動シーンは、試合開催日にスタジアム周辺で行われるイベントへの参加やサポーターとの交流、フィールド内でのパフォーマンスなどです。
また、名古屋市内の地域のイベントにゲスト出演したり、小学校を訪問するなどして、グランパスを広くアピールする活動も行っています。
https://nagoya-grampus.jp/fan/mascot/#information
1日に複数のイベントを回るなど、精力的な活動をしていますね。
パッと見で気になる点としては、手(シャチなのでヒレ)も足も短くて動きづらそうだなあ、というところでしょうか。
次章より、「フィジカル」「動作」「演技」「マインド・コミュニケーション」の4項目に分けて見ていきます。
みんなぁぁぁあああぁぁぁーー😭😭
— グランパスくん (@grampuskun_No1) February 16, 2019
ぼく #2連覇 達成したがね‼️‼️‼️今年も #マスコット王👑 なんだわ😆
史上初の2連覇🎊ほんとたくさんの応援ありがとさんでした👍みんなと歴史をつくったんだわ‼️
この勢いをチームにも🔥2019シーズン盛り上げていくがね⤴️⤴️よろしくなも🙌#grampus pic.twitter.com/ltuxUIFIF7
着ぐるみになるには ~フィジカル編~
まずは、着ぐるみを着て動く場合、フィジカル面で必要なことを考えてみましょう。
- 体格
そもそも身長何cmまでならグランパスくんの中に入れるのかを考えてみましょう。
選手と並んで写っている写真からの推測で、グランパスくんは頭から足までで175cm前後と推測できます。ブーツの底の高さ5cm+着ぐるみの厚み10cmと仮定して差し引くと、160cmぐらいまでの人であれば中に入れそうです。この点、私は身長154cmのため、クリアです!まずは第一関門突破。 - 筋力
グランパスくんは2頭身強の体格をしているので、肩の位置は人間よりも相対的に低いことになります。身長からの推測で、肩は地上から100cm程度。ヒレを動かす場合、上腕を体に沿わせて肘から先を動かすことになるはずです。人間としての生活では行わない動きなので、腕全体の筋力が必要になるでしょう。
また当然ながら、着ぐるみを全身にまとって動くことで、体力も消耗します。下記の記事によると、重量は3kgとのこと。生まれたての赤ちゃん1人分ぐらいですね。
腕を中心とした筋トレに加えて、全身持久力を養うトレーニングが必須でしょう。 https://www.sankei.com/article/20190807-26SBJPFEHRLP7HQAWHK4FNOISA/ - 暑さ
近年、都内の夏も「酷暑」というレベルですが、愛知はそれに加えて湿度が高く、空気が常にまとわりつく感覚があります。Jリーグは夏も試合があり、試合当日のイベントは昼間から行われます。一体どう対応しているんでしょうか。
下記の記事によると、内部の温度は50度に達するため、①着用時間を15~30分に制限する ②冷却ベスト・冷感スカーフで冷やす ③水分をいつでも補給できるようなシステムにより対策をしているようです。
万全の対策を取りつつ、体が慣れるのを待つしかないという状況。
https://www.sankei.com/article/20190807-26SBJPFEHRLP7HQAWHK4FNOISA/ - 五感などの感覚器官
視覚・聴覚は普段の生活より大幅に制限されると予想されます。サングラスを付けて、音を流さずにヘッドホンを付けているぐらいの感覚でしょうか。
臭いについては個人的にかなり気になります。定期的にクリーニングは行っているでしょうが、着ぐるみ内部は夏場の汗をかなり吸収しているはず。現役の中の人には申し訳ない気持ちも大きいですが、自分がどれだけ耐えられるか、想像が進まない状況です。
また、着ぐるみの中に入ると基本的に布状の物に閉じ込められた状態になります。閉所恐怖症の人には耐えられないのではないでしょうか。
これら感覚的なことは鍛えることが難しく、受け入れられる許容範囲も個人差が大きい部分。ある意味で持って生まれた資質が問われることになりそうです。
着ぐるみになるには ~動作編~
グランパスくんはシャチを模したキャラクター。人間とは大きく異なる独特の体型をしています。着ぐるみとしての動作もトレーニングが必要そうです。
- ヒレ(手)
グランパスくんはシャチを模したキャラクターのため、いわゆる「手」としてヒレを使っています。が、当然ながらヒレなので極端に短いです。また造形上、腕と手が分かれておらず指もないため、自由度はかなり低いです。
動画を見る限り、ヒレの特に先端部分は他より柔らかい素材でできていて、グローブレベルで使えるようになっているようですが、手で物を持ったりサインを書いたりするのは苦戦しそう。これも個別でトレーニングが必要そうですね。 - 足
足もかなり短く、パッと見はブーツ部分のみしか足がないように見えます。ただ、動画を見ると、いわゆる「足」のように見えるものの上部分も実質足的に使えているようで、ひざぐらいまでは動かせるように推測できます。着物を着て歩く感覚でしょうか。これは慣れればクリアできそうです。
- 尾ひれ
グランパスくんは頭から数十センチ上まで延びた長い尾ひれを持っています。意外と、バランスを取るのに苦労するんじゃないでしょうか。気を抜いてうっかり重心が後ろ寄りになるとコケそうです。
また、急に旋回するなどすると、尾ひれで周囲の人を張り倒すなどの危険性も考えられます。ヒレを模したものを体に付けて生活してみるなど、普段の生活からトレーニングが必要そうです。 - ダンス
中には高いダンススキルを誇るマスコットもいますが、グランパスくんはそもそもダンスでできること自体が少ないため、ダンスの素養はほとんど要りません。よかった。
着ぐるみになるには ~演技編~
自分とは別の人になる=演技、ですよね。グランパスくんになった場合、どんな演技が求められるでしょうか。
- 喜怒哀楽
着ぐるみで演技する際の難しいことの1つとして「顔が一切変わらない中で感情を表現する必要があること」があります。感情表現は頭を動かしたり身振り手振りが中心。加えて、着ぐるみは主に楽しさを増幅する役割にもかかわらず、グランパスくんは人間基準で言う「真顔」寄りの表情。喜怒哀楽の中でも特に「喜」と「楽」の表現に工夫が必要というハンデを背負っています。動画を見ると、主に手びれをバタバタさせたり、跳んだり回ったりする等して変化を付けていますね。どう動くとどういう感情が表せるか、トレーニングが必要そうです。
- 周囲からどう見えるか
身振り手振りやその振る舞いが、周囲の人からどう見えているか、という観点を持つことも重要そうです。例えば、喜びの表現としてヒレをバタバタさせたとき、「喜んでいる」というより「怒っている」ように見える可能性もあります。喜んでいることが伝わるような動作ができるよう、自分の脳内のイメージと客観的な見え方をすり合わせるために、鏡の前で動くなどしてトレーニングする必要がありそうです。
着ぐるみになるには ~マインド・コミュニケーション編~
人間とのコミュニケーションも重要な要素。自分とは別人格としてコミュニケーションを取るには、何が必要でしょうか。
- 自己肯定感
グランパスくんはJリーグのマスコットの中でも人気が高く、他チームのサポーターからですら愛される存在です。
また、多くの人間にとって「自分が知っている人≒自分のことを知っている人」ですが、マスコットは不特定多数の人から知られた存在なので、「自分が知っている人<自分のことを知っている人」という関係性になります。
これらを合わせると「見知らぬ多くの人が自分との交流を強く望んでいる」という、一介のWebディレクターでは持ちえないマインドを持つ必要があることが想像できます。いわゆる「高い自己肯定感」ですね。
中の人になることで、憑依的にこのマインドを得る人もいるのかもしれませんが、その場合、人間としての実生活との落差がある意味怖いところ。長期的に見ると、ホンモノの自己肯定感を養うことが理想なのだと思います。
自己肯定感向上のためのトレーニングはいくつかありますが、アファメーションなどの自己暗示系が有効でしょうか。いずれにしろ、コツコツ努力を積み上げることが必要そうです。 - 知名度の格差
Jリーグのサポーターの中では高い知名度を誇るものの、一方で、Jリーグに興味が薄い人にはほとんど知られていない、という知名度の格差があります。当然、コミュニケーションを取る目的も異なります。
サポーター向けには、ある程度突っ込んだやり取りをしながら「ファンとしての熱量を上げてもらう」ことが目的になり、逆にJリーグに興味が薄い人には、まずはかわいいマスコットとして認知してもらうことを入口にし、「名古屋グランパス」自体の認知度を上げ、最終的にはスタジアムに足を運んでもらうことが目的になります。中には自分を怖がったり嫌悪する人もいることを想定しながらコミュニケーションを取る、高いコミュニケーション能力が必要です。 - 不測の事態への対応
イベントごとにはトラブルが付き物。急にスケジュールが変わる、天候が急変する、機材が壊れるetc..こうした事態でも、「グランパスくん」であることを忘れずに適切な対応をして乗り切る・場を盛り上げることが必要になります。高いテンションでグランパスくんを演じつつも、冷静に判断できる余地は残しておく。。どうトレーニングすればいいのやら、ですね。
起こり得ることを予めシミュレーションをしておく・場数を踏む、ことで養われる面もありますが、持って生まれた資質も重要そうです。
まとめ ~日々の業務に活かす~
以上、私がグランパスくんになったら、と仮定して、想像を巡らせてみました。
Webディレクターとしてサイト制作のプロジェクトを行うにあたって、どんなケースにこれを活かせるでしょうか。
例えば・・・表立って伝えられない顧客側担当者の社内事情(売上/利益の状況 や 上司や別部署との力関係など)について推察し、適切なアプローチを取ることに繋がったり、逆に顧客によっては考慮不要なポイントを見出せたりと、少ない情報から仮説を立てて施策を提案・実施するスキルの向上に活かせると思われます。
また、これを複数人でやってみると、複数の視点観点からより網羅的に必要要素が上げられたり、コミュニケーションの強化という副産物も生まれそう。
皆さんもお遊びがてらぜひやってみてください!
2022年中途入社。休日は野球とサッカーとお酒。
ゴシップが大好物です。