エンタープライズ向けECパッケージ
あなたは知っていますか?ECパッケージ比較コロナを経て、Webマーケティングの活用の重要性が高まるとともに、企業のEコマースへの取り組みがさらに強まり、増えています。特にECパッケージでは「Shopify」の普及が進んでおり認知度も高まっています。しかし、Shopify はスモール〜ミドルレンジ向けが中心で、エンタープライズ向けの情報はまだ十分ではありません。エンタープライズ向け EC パッケージの情報が少ない中で、売上規模、商品点数・構造の複雑さ、OMS(受注管理システム)や WMS(倉庫管理システム)との連携など、選定において重要なポイントを含めて解説します。
エンタープライズ向けECパッケージとは
グローバルで競争力のあるECパッケージソリューションエンタープライズ向け主要ECパッケージ
SAP Commerce Cloud(旧Hybris)は、SAP・ERPとのシームレスな統合を最大の強みとしており、基幹業務と直結したECを実現できます。標準で充実したBtoB機能を備え、複雑な法人取引や契約価格管理・商品情報管理にも対応できるため、グローバル展開を行う大規模企業に適しています。
Adobe Commerce (旧Magento)は、AdobeのCMSやDXPと統合しやすく、コンテンツ重視のEC体験を構築できるのが特長です。拡張機能やカスタマイズの自由度が高いためBtoC向けに強く、柔軟な表現力を必要とするブランドサイトに向いていますが、BtoB対応には追加開発が求められます。また、言語がPHPであるため、細かなバックエンドでの制御は不得手とされているのが特徴です。
Salesforce Commerce Cloudは、SalesforceのCRMやマーケティングオートメーションと連携し、顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供できるECプラットフォームです。SaaS型で運用負荷を抑えられる反面、自由度の高いカスタマイズには制約があります。BtoBはLWCを基盤にSalesforce製品との連携を強化、BtoCでも同様にシームレスな統合が可能です。
ヘッドレス型ECの代表格
Sitecore OrderCloudは、CMSやパーソナライズ基盤と自然に統合できるDXP起点のECプラットフォームです。複雑な注文フローを持つB2BやB2B2Cのシナリオに強みがありますが、EC機能そのものは限定的で、ヘッドレス型を前提として導入を進める必要があります。
commercetoolsはヘッドレス型の次世代ECプラットフォームで、フロント体験を自由に設計できます。必要な機能だけをマイクロサービスとして組み合わせるコンポーザブルコマースに最適で、グローバル大手企業の導入実績も豊富です。ただし標準機能は最小限のため、SIや開発リソースが前提となります。
ミドル向けEC SaaS
ミドル向けパッケージとして、世界的に急速に普及しており、日本国内でも利用が拡大しています。さらに、豊富なアプリや API を通じた柔軟な拡張性により、幅広いビジネスニーズに対応できる点も大きな特長です。
国内実績のあるECパッケージ
国内No.1の導入実績を誇り、ミドルからエンタープライズ企業まで幅広く利用されています。さらに、フルスクラッチに近い柔軟なカスタマイズ性 により、業界特有の要件や大規模な運用にも対応できる点が特長です。
グローバルでの評価
世界的なITソフトウェアの評価機関であるガートナー、そして実際のユーザー評価をもとにしたG2などが、毎年ECパッケージやCMSといったツールを多角的に評価しています。最新の評価状況は以下のとおりです。
※これらのグローバル評価機関のデータをもとに、大規模・中規模・小規模の分類を策定しています。
世界中のユーザーによるエンタープライズ向けECパッケージの評価G2
世界中のユーザーによるエンタープライズ向けECパッケージの評価G2
実際に使用したユーザーのレビューを確認できます
主要製品の評価はこちら
ITソフト評価機関のガートナーが示す評価はこちら
Gartner(ガートナー)とは?
Gartner(ガートナー)は、ITやデジタル分野の製品・サービスを分析・評価する世界的な評価機関です。多くの企業がツール選定や導入判断の参考として、これらのレポートを活用しています。
近年のGartnerレポートでは、「CMS」という単独カテゴリでの評価は行われなくなり、「DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)」や「パーソナライゼーションエンジン」など、より包括的な視点で分類・評価が行われています。
これは、CMSの役割が単なるWeb管理ツールから、マーケティングやパーソナライズ、オートメーションを支えるデジタル基盤へと進化していることを示しています。
ミドル向けECパッケージの評価G2
G2とは?
G2は、ITやソフトウェア製品を実ユーザーレビューに基づき評価する世界的プラットフォームです。
企業の意思決定者や担当者が、導入前に使いやすさ・満足度・サポート品質・導入実績などを確認する手段として活用しています。G2は「Satisfaction(満足度)」と「Market
Presence(市場での存在感)」の2軸で製品を分析し、Grid®
Reportとして4象限に分類。
機能比較だけでなく、現場視点での使いやすさや評価を可視化し、ガートナーとは異なる実用的な比較が可能です。
規模で考える最適なECパッケージとは?
「売上に見合ったECパッケージ選び」が大切です!将来の成長も見据えて柔軟に選ぶことがポイントです。
※分かりやすくするために細かい差異には目をつぶり大まかな分類をしています。
さらに詳しく比較の内容を知りたい方はお問い合わせください。
売上規模に応じたECパッケージ選定の2つのポイント
基本的に、企業規模が大きくなるほど機能要望が増加し、それに伴ってカスタマイズ性がより重要になります。
費用対効果を最大化するためには、自社の規模にあったECパッケージやASPを選択する必要があります。
Point1:フロントエンドの柔軟性
お客様にどれくらい素早く新機能を提供できるか?
売上規模が大きくなるほど、商品数やカテゴリーは増え、決済手段やアプリ対応など求められる要件は一層複雑になります。さらに検索や絞り込み機能の強化、会員をファン化するためのコンテンツ充実など、取り組むべき施策は多岐にわたります。こうした拡張をどれだけ素早く実現できるかが、EC成長のカギとなります。新しい機能をスピーディーに展開できれば、顧客体験の向上と売上拡大を同時に実現可能です。柔軟で拡張性の高い仕組みこそ、成功するECには欠かせません。
Point2:バックエンドの連携強化
バックエンドとの結びつきによりどれくらい効率化、自動化ができるか?
ECパッケージは、バックエンドとどれだけ結びついているかで効率化の度合いが大きく変わります。注文データが在庫や受注処理に自動反映されれば、手作業は大幅に削減され、物流や出荷までシームレスにつながることで配送スピードも向上します。さらに、顧客データがCRMと統合されればマーケティング施策を自動化でき、よりパーソナライズされた体験を提供できます。こうした仕組みによって運営コストを抑えながらスピードと顧客満足度を同時に高めることが可能になります。
Shopifyのトレンド
Shopifyが支持を集める4つの背景
1.導入のしやすさが支持を拡大
Shopifyは世界中のEC事業者から支持を集めており、特に小規模〜中規模のビジネスで急速に広がっています。導入の手軽さと拡張性の高さが評価され、成長段階に応じて柔軟に活用できる点が支持されています。
2.スピーディに立ち上げ可能
セキュリティや決済など、EC運営に不可欠な機能も標準で備わっており、最小限の手続きで構築可能です。クラウド型のため初期投資を抑えつつ、短期間でショップを公開できます。
3.豊富なテンプレートとアプリ
誰でも自分らしいECサイトを手軽に構築でき、必要な機能をワンストップで利用しながら、豊富なアプリや拡張機能によってビジネスに合わせた柔軟なカスタマイズが可能で、他のASPと比べても圧倒的に高い拡張性を誇ります。
4.SNS連携に強く集客に有利
SNSや主要マーケットプレイスと自動的に連携し、商品や在庫情報を一元管理できるため、運営負担を減らしながら複数チャネルでの販売を効率化し、新規顧客獲得と売上拡大を実現します。
それでもまだ、エンタープライズECパッケージが採用される理由は?
多くの支持を集めるShopifyですが、事業規模や将来の拡張性を踏まえると、エンタープライズECが選ばれるケースがあります。
その主な6つの理由をご紹介します。
バックエンドとの連携度合い
- エンタープライズ向けECパッケージは、ERP/WMSとのシームレスな統合機能に優れており、複雑なECに対して、高い効果を発揮します。
- 受注→出荷に至る複雑なワークフローやロット管理、複数倉庫からの発送などには高度なOMS連携が不可欠であり、エンタープライズ向けECパッケージの方が有意性が高いです。
ライセンスコストだけでなく、トータルコスト
- バックエンドシステム、ERPとの深い統合により、業務効率化や人的オペレーション削減が可能で、年間ライセンス以上のコスト削減が見込めるケースがあります。
複雑な商品構造を管理できない
- Shopifyではナビゲーションが大型カタログでは、煩雑になってしまい商品管理ができません。
- Shopify にはバリアント数(例:オプション数 3、バリアント数 100)の制限があり、複雑な商品構成には向かないという課題があります。
Shopifyのメイン顧客層のずれ・エンタープライズへのサポート体制
- Shopify plusなども出しているが、ミドル層規模の顧客が最もボリュームゾーンであり、重要な顧客層であることは間違いないですが、どうしてもエンタープライズ向けのサポートよりもボリュームゾーンの顧客へのサポートが充実してしまいます。
- エンタープライズ規模の顧客はエンタープライズ規模だからこそ起こる課題に対して、サポートを求めており、ミドル層とは課題が異なるケースがあります。
パフォーマンス、ハイピークトラフィックへの耐性
- Black Fridayなどの高アクセス時に安定稼働できる信頼性の高さは、SAP Commerce CloudやSalesforce Commerce Cloudが選ばれる大きな要因です。Shopifyも高アクセス時に安定稼働はしますが、順番待ちによる制御で擬似的に対応する方式のため、動的にリソースを拡張してスムーズに処理を分散できるSAPやSalesforceと比べると劣ります。
セキュリティとコンプライアンスへの対応
- 大企業や規制産業では、プラットフォームが高度なセキュリティ機能や法令遵守(例:GDPRなど)を標準で持っていることが重要です。
エンタープライズ向けECパッケージの変化
従来の一体型構造から分離型へ!柔軟性と拡張性を重視し、持続的な成長を支える仕組みへと変化しています。
フロント・バック一体型
従来のECパッケージは、導入スピードがサイト表示(フロント)と基幹処理(バック)が一体化した構成が一般的でした。オールインワンで導入しやすく、基本機能が揃っている点がメリットです。
一方で、フロントとバックが結合されているため、改修や拡張が難しく、新しいチャネルや技術への対応に制約があります。
結果として、大規模化・多様化するニーズに柔軟に応えるには限界がありました。
フロント・バックの分離
近年は、フロントとバックをAPIで連携させる「ヘッドレス」や「Composable
Commerce」が広がっています。
これにより、複数チャネルでの展開や最新技術の導入が柔軟に行えるようになりました。
機能ごとに最適なサービスを組み合わせられるため、開発・運用のスピードと自由度が向上します。
エンタープライズECは一体型から分離型へとシフトしつつあります。
フロントとバックの分離により改修の自由度と運用性が向上
フロントとバックの密結合が招く運用上の制約
フロントとバックが密結合しているため、在庫管理や商品データベースの変更に伴いフロント側も同時改修が必要となり、結果としてバック機能が1年単位でしか変えられない場合、フロント改修もそのサイクルに縛られ、UIを素早く改善したくてもバック改修待ちで動けないという課題が生じます。
フロントとバックの分離による改修の自由度向上
フロントとバックを分離することで、フロントは短い改修サイクルで迅速に機能追加やUI改善が可能になり、バックに影響を与えず安定した運用を維持できるとともに、サイクルの異なる改修も柔軟に調整が可能です。
分離することで目的に応じて各機能に特化したシステムの導入が可能に!
フロントの柔軟性
1.フロント単体での迅速な改修
フロントとバックエンドが分離されていることで、フロント単体で改修や新機能追加が可能です。開発サイクルを短縮できます。
2.バックエンドに依存しない運用
UI改善やキャンペーン対応などをバックエンドに影響させずに実施可能です。迅速な施策展開や運用調整ができます。
3.複数チャネルでの一貫運用
Web、アプリ、SNSなど複数チャネルで同じバックエンドを活かしつつ、フロント側を最適化して提供可能。
バックエンドの連携強化
1.業務プロセスの効率化
ERPやWMSなど基幹システムと連携することで、受注・在庫・出荷などの業務プロセスを自動化し、運用負荷を軽減できます。
2.データ一元管理の強化
商品情報、顧客データ、在庫状況などをバックエンドで統合管理し、フロントや各チャネルで正確に反映可能です。
3.開発・運用の効率化
APIやモジュール連携により、新しいサービス追加や機能拡張を容易に行え、フロント改修や運用にも柔軟に対応可能です。
ヘッドレスコマースの重要性
ヘッドレスコマースは、SNSからの購買をシームレスにつなぎ、あらゆるチャネルに柔軟に展開することで、顧客接点を最大化しEC事業の成長を加速させます。ヘッドレスコマースに関する3つの重要なポイントをご紹介します。
コンテンツマーケティング
「モノを売る」から「体験や共感を売る」時代へ
近年は、ただ商品を並べるだけでは顧客に選ばれにくく、ブランドの世界観やストーリーを伝えるコンテンツが重要視されています。
ECにおいては、ファッションの着こなし提案、食品のレシピ記事、コスメの使用体験動画など、商品そのものではなく「暮らしのシーン」に寄り添う情報発信が購買を後押ししています。ヘッドレスコマースのようにフロントとバックを分離し、柔軟にコンテンツを多チャネルに展開できる仕組みがあると、こうしたブランド体験をより効果的に届けられます。
コンテンツの多チャネル展開が必須に
コンテンツは、WebサイトだけでなくSNS・アプリ・動画プラットフォーム・店舗のデジタルサイネージなど、複数チャネルにまたがって顧客に届けることが欠かせません。しかし従来型のECパッケージでは、フロントとバックが一体化しており、各チャネルごとに改修や調整が必要になり、スピーディな施策展開が難しいという課題がありました。
ブランド体験の一貫性
各SNSごとにUIや機能が異なっても、ヘッドレスならバックエンドを共通化し、商品データやキャンペーン情報を一元管理できます。チャネルごとに表現を最適化しつつ、ブランドとしての世界観やトーンの一貫性を保てるため、顧客に統一されたブランド体験を届けられます。
SNSの活用
シームレスな購買導線
InstagramやTikTokなどSNS内で商品が発見され、そのまま購入につながるケースが増加しています。ヘッドレスコマースならAPI連携でスムーズに在庫・決済・配送と接続でき、SNSから直接購入完了まで誘導が可能です。
顧客データを活かしたパーソナライズ
SNSでの行動データをEC基盤と連携させることで、顧客の興味や関心に応じた商品提案やコンテンツ配信が可能となり、一人ひとりに最適化された購買体験を提供できます。
コマースの展開
グローバル・新規市場への柔軟対応
新たな国や地域への展開時も、バックエンドの基盤はそのままに、フロントエンドをローカライズすれば対応可能です。スピーディーに市場投入できるため、成長機会を逃しません。
将来の拡張性
決済手段、物流システム、マーケティングツールなど、事業拡大に応じて必要な外部サービスを柔軟に追加・統合が可能です。