こんにちは。デザイナーの平田です。 最近、ライティングに関連した本を読みました。

読んだ本はこちら
「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」 (Amazon)ひきた よしあき (著)

博報堂スピーチライターである著者による、文章を書くコツが紹介されている本です。
文章を書く時の具体的なテクニックから、考え方や練習方法などが紹介されていました。 文章力を付けたい人にお勧めです。
本書の中で共感したところや、面白いと思った部分を紹介します。

文章の色を見る

著者は、読みやすさの判断基準として、文章の「色」を見ることを勧めています。 「色」っていうと文字の色?と思いますが、そうじゃないんです!

広告会社に入ったころ、壁に貼られたラフの新聞広告案を見た先輩デザイナーがこう言いました。 「文章が、黒いなぁ」 どういう意味かと尋ねると、「漢字が多くて全体的に黒く見える文章」だと教えてくれました。 同じことをレポートや報告書でも言われました。 「目を細めて見ろ。全体が黒いだろ。こういう文章は難しい印象が先に立って、お客さんに読んでもらえないんだ」

(「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」ひきた よしあき (著) かんき出版、2018年、140頁)

書いたものを紙に印刷し、遠くから目を細めて眺めてみる。 全体が黒っぽかったら、間違いなく読みにくい。 白いところに黒い箇所がある。そこに難しい漢字、言いまわしがあります。

(「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」ひきた よしあき (著) かんき出版、2018年、141頁)

著者は「文章の色を見る」という表現で、文章を「読むもの」ではなく「見るもの」としてとらえているんですね。 タイポグラフィのようにビジュアル要素の一部として文字を見る。
文字には形があり、テキスト量や文字の複雑さは、見たときの印象を左右します。 黒っぽく密度の高い文章は、ほんの一瞬の印象で読みにくいと思われてしまいます。

Webサイトは日々更新されるため、どんなテキストが入っても崩れないようにデザイン・コーディングします。
とはいえ、メインビジュアルなどデザイン性の高いレイアウトでは、 デザインに合わせて文字量も考慮する必要があります。
文章の色を見る、という考え方は、デザインの面から見ても面白いと思いました。

リズムがいい文章

著者は短く伝わる文章として、リズムのいい文章の例を挙げています。
文章を書くのに、「音」を意識するという視点もまた面白いです。

私は、「文章は内容ではなくリズムで読ませる」と、強く信じています。
私が学んだ小学校1年生の教科書に、こんな一文がありました。

小さい白いにわとりが、こむぎのたねをもってきて、みんなにむかって言いました。
だれがたねをまきますか。
ぶたはいやだといいました。いぬもいやだといいました。
ねこもいやだといいました。
小さい白いにわとりは、ひとりでたねをまきました。
(ウクライナ民話『小さい白いにわとり』より)

読んだとたん、メトロノームがカチカチと動くようなリズムの虜になりました。

(「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」ひきた よしあき (著) かんき出版、2018年、155-156頁)

名文と呼ばれるものは、必ずリズムを持っています。
文章に音楽が流れているのです。
それを声に出して読み、身体になじませ、暗記する。
これを繰り返していると、自然とリズム感のある文章が書けるようになります。

(「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」ひきた よしあき (著) かんき出版、2018年、157頁)

このにわとりの文章。頭の中で再生するとすごく読みやすいと感じました。
確かに、CMや歌詞のようにメロディやリズムがあるものは自然と覚えやすいと感じます。 俳句でもラップでも韻を踏んだりしますもんね!
リズム感のある文章は、人に印象付ける魅力があるのだと気がつきました。

文章を書くとき、詩を書くわけではないので、リズムは意識していませんでした。
本書を読んで、日常的に書く文章でもリズムの良さを意識して書いてみたいと思いました。

問う側の心理がわかると正しい文章が書ける

著者は文章力を磨く方法として、「問い」を写し続けることを挙げています。

「算数の文章題は、読むだけでなく書き写しなさい」
これは、私が小学校時代に通っていた「藤原塾」で教わったことです。
(中略) 「勉強ができない子の大半は、問われている内容がわかってないんや。
問題を出した人が、何を尋ねているのか。
それを知るのは、出題者になったつもりで書き写すのがいちばん早いんや」 (中略) 効果が出てきたのは、半年以上たってからでしょうか。
計算問題のミスは直りませんでした。
しかし、「旅人算」「つるかめ算」「方陣算」といった文章題がわかるようになってきました。

(「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」ひきた よしあき (著) かんき出版、2018年、186-187頁)

多くの仕事は、「何を問われているか?」を考えることからはじまります。
上司から、会社から、得意先から、世の中から何を問われているか。
それを考えずに、自分の好きなことをはじめても成功はありえません。

(「博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ」ひきた よしあき (著) かんき出版、2018年、189頁)

ライティングなのに、国語ではなく算数に絡めているところが意外でした。 しかし、算数の文章題の例をみて、「そうなんだよな~」という実感がありました。
小学生のころを振り返ると、算数の問題で頭を使ったのは、何を求めればいいか考えることだったように思います。

よくあるのがこんな問題。
「Aさんが分速何mで〇〇に向かっています。Bさんが分速何mで追いかけました。BさんがAさんに追いつくのは何分後ですか?」

私はこの文章を読んだだけでは、頭にイメージが浮かんでこないのです。 こうした問題を解くとき、いちいち図を書いて何を求めればいいのかを整理していました。
正答を出すには、相手の問いが何かを知る必要があったのだなと納得しました。

仕事でも、メール、チャット、Webサイト、資料など文章を書く機会はたくさんあります。 そのとき相手の心理に立って、「相手が何を尋ねているのか」を理解していないと、 適切な答えが返せずコミュニケーションが成立しないのだな、と改めて思いました。 文章を書く前に、まずは相手の望んでいるものを理解することが大事ということですね。

まとめ

文章の色やリズム、算数の文章題など、意外なところに結びついた内容で驚きました。 今回紹介した以外にもたくさんのテクニックが紹介されています。 興味のある方は読んでみてください。

平田

平田 Webデザイナー

UI/UXにこだわるWebデザイナー。
コーディングを想定してデザインしていくのが得意。
2018年入社。 健康オタク。