要件定義
大規模サイトリニューアルで陥りやすいポイント|着手前に知っておきたい8つの落とし穴
大規模Webサイト(数千〜数万ページ規模)のリニューアルで特に陥りやすいのは、①スケジュール・予算感の見誤り、②「見た目」と「中身」どちらかへの偏り、③認証基盤・基幹連携の移行難易度の過小評価、④グループ・グローバル特有の合意形成の難しさ、⑤CMSの構造(ツリー型かリスト型か)のミスマッチ、⑥中堅・中小向け情報の鵜呑み、⑦CMS選定にばかり注力し導入・運用への投資を怠ること、⑧非機能要件(アクセシビリティ・セキュリティ等)の後回しの8つです。
以下、それぞれの実態と対策を解説します。
大規模サイトのリニューアルで陥りやすい8つの落とし穴
大規模Webサイト(数千〜数万ページ規模)のリニューアルで特に陥りやすいのは、①スケジュール・予算感の見誤り、②「見た目」と「中身」どちらかへの偏り、③認証基盤・基幹連携の移行難易度の過小評価、④グループ・グローバル特有の合意形成の難しさ、⑤CMSの構造(ツリー型かリスト型か)のミスマッチ、⑥中堅・中小向け情報の鵜呑み、⑦CMS選定にばかり注力し導入・運用への投資を怠ること、⑧非機能要件(アクセシビリティ・セキュリティ等)の後回しの8つです。大規模サイトのリニューアルは、多くの企業で10年に一度程度しか発生しないプロジェクトであるため、同じような失敗パターンが企業や業種を問わず繰り返し起きています。着手前にひととおり目を通しておくことで、企画段階での手戻りを未然に防ぎやすくなります。
①スケジュール・予算感の見誤り
日々のWebサイト更新やHTML/CSSの知識があっても、大規模なCMS導入・移行の経験がないと、要件定義や実装にどれだけの期間が必要かを見誤りやすくなります。実際に「まずはPoC(概念実証)から始めたい」「CMS導入は半年程度で終わる」という前提でスケジュールを組んでしまい、後から見直しが必要になったケースもあります。CMS導入では、テンプレート設計・ワークフロー設計・権限設計など、決めるべき事項が想像以上に多くあります。スケジュール感が曖昧なまま進めることは、そのまま予算感も曖昧なまま進めることを意味する、という点は特に注意が必要です。
この落とし穴を避けるには、企画の初期段階で「要件定義にどれだけ時間をかけるか」を具体的に見積もることが有効です。過去に複数回リニューアルを経験した担当者であっても、こうした段取りのズレは珍しくありません。だからこそ、多くの大規模案件を見てきた第三者の知見を、できるだけ早い段階で取り入れることに意味があります。
②「見た目」と「中身」どちらかへの偏り
Webサイトの評価には、グラフィカルデザインやユーザビリティといった「見た目(一見して整って見えるかどうか)」と、更新性・拡張性といった「中身(実際の運用のしやすさ)」の2つの軸があります。マーケティング部門・広報部門が主導するプロジェクトでは見た目に評価が偏りがちで、リニューアル後に見た目の完成度は向上しても、運用担当者からは「結局、更新のたびに外部委託が必要で、運用は楽にならなかった」という声が上がることがあります。要件定義の初期段階から、この2つの軸をバランスよく評価項目に含めておくことが重要です。
この偏りが起きやすいのは、プロジェクトの評価者が「対外的にどう見えるか」に関心が強い部署に偏っている場合です。要件定義の会議体には、実際に日々更新を行う運用担当者を必ず含め、「中身」の視点からもレビューできる体制にしておくことをおすすめします。
③認証基盤・基幹システム連携の移行難易度の過小評価
「会員のログインIDを新しいサイトにそのまま引き継げばよい」という単純な話に見えて、実際には難易度が高いのが認証基盤の移行です。一定レベル以上の企業では会員のパスワードが暗号化されており、暗号化されたままでは新しい認証基盤にそのまま移行できません。復号する仕組みを用意するか、利用者に新しいID・パスワードを再発行してもらう仕組みを用意する必要があり、単純なコンテンツのコピーとは全く異なる難易度になります。この点は、見積もり段階で見落とされやすいポイントです。
また、認証基盤自体もこの10年でオンプレミス型からクラウド型(Microsoft Entra ID、Oktaなど)へと標準が移り変わっています。前回リニューアル時の知見をそのまま当てはめようとすると、現在の標準的な連携方法とズレが生じることがあるため、現時点での標準がどこにあるかを踏まえて計画することが重要です。
④グループ・グローバル特有の合意形成の難しさ
グループ会社や海外拠点を含むサイト統合では、どこか特定の拠点・リージョンが強い発言力を持っている場合、合意形成に長い時間がかかることがあります。統合の意義そのものが各拠点にとって腹落ちしていないと、「各拠点で個別にやってください」という結論になってしまい、統合の効果が半減するケースもあります。合意形成のプロセスを軽視すると、システム面の設計がどれだけ優れていても、運用フェーズで機能しなくなるリスクがあります。
対策としては、システム設計の議論を始める前に、各拠点・グループ会社の責任者を集め、統合によって何が良くなるのかを共通言語で説明する場を設けることが有効です。技術的な統合メリットだけでなく、各拠点にとっての具体的なメリット(運用負荷の軽減、ブランド一貫性の向上など)を丁寧に説明することが、合意形成のスピードを左右します。
⑤CMSの構造(ツリー型かリスト型か)のミスマッチ
CMSには、コンテンツを階層構造で管理する「ツリー型」と、フラットなリストとして管理する「リスト型」があります。数千ページ規模のコンテンツを部署・カテゴリー横断で管理する大企業には、本来ツリー型の方が適しています。しかし、世の中に流通するCMS情報の多くは個人・小規模サイト向けのリスト型ツールを前提にしているため、大企業がその流れに乗ってリスト型を選んでしまい、後から「カテゴリーが増えるたびに管理が煩雑になる」「マルチサイト運用がしにくい」といった課題に直面するケースがあります。
この落とし穴は、CMS選定の初期段階でシェアや知名度だけを基準にしてしまうと特に起きやすくなります。自社が管理したいページ数・サイト数・部署数を具体的に想定したうえで、構造面の適性を確認することが重要です。
⑥中堅・中小企業向け情報の鵜呑み
Web検索で得られる「サイトリニューアル」に関する情報の多くは、中堅・中小規模のサイトを前提にしたものです。書かれている内容自体が誤っているわけではありませんが、数千〜数万ページ規模・複数部署・複数システムが絡む大規模サイト特有の論点(システム連携、グループガバナンスなど)は扱われていないことがほとんどです。自社の規模に合った情報かどうかを意識しながら参考にする必要があります。
特に注意したいのは、中堅・中小企業向けの情報をもとに立てたスケジュールや体制計画を、そのまま数万ページ規模のプロジェクトに当てはめてしまうことです。情報を参考にする際は、常に「これは自社と同じ規模感を前提にした話か」を意識することをおすすめします。
⑦CMS選定にばかり注力し、導入・運用への投資を怠る
CMS導入プロジェクトでは、多くの担当者が「どのCMS(ソフトウェア)を選ぶか」に力を入れがちです。しかし実際には、CMSというソフトウェア自体の選定で決まる要素は全体の3割程度にすぎず、残りの7割は「どう設計して導入するか」「どう運用していくか」で決まるといわれています。一般的な業務ソフトウェア(会計ソフトなど)は選定した時点で使い方の大部分が決まりますが、CMSは違います。ソフトウェアの比較検討だけに時間をかけすぎず、導入パートナーの設計力・運用支援力にも同等以上の比重を置いて評価することが重要です。
同じCMS製品を導入していても、パーツ化・フィールド化をどこまで作り込むかによって、現場の更新しやすさは大きく変わります。ソフトウェアの選定に時間をかけた分と同じくらい、導入設計・運用設計にも時間と予算を配分することが、長期的な運用コストを左右します。
⑧非機能要件(アクセシビリティ・セキュリティ等)の後回し
デザインやコンテンツ企画に注目が集まりやすい一方で、セキュリティ、可用性、監査ログ、アクセシビリティ対応(法令対応を含む)といった非機能要件は、要件定義の後半や実装フェーズになって初めて具体的に検討されることが少なくありません。しかし、これらの要件はシステムの構成そのものに影響するため、企画の後半で持ち出すと大幅な設計変更や追加コストにつながるおそれがあります。
非機能要件は、企画段階のごく初期に「対応が必要な範囲」だけでも整理しておき、要件定義の項目として最初からリストに含めておくことをおすすめします。
落とし穴を避けるための共通点
ここまでの8つのポイントに共通するのは、「社内に経験者がいない」「参考にできる情報が少ない」状態のまま、限られた情報や前提でプロジェクトを進めてしまうことです。大規模サイトのリニューアルは10年に一度程度しか発生しないため、社内だけで正解にたどり着くのは簡単ではありません。多くの大規模案件を見てきた第三者の知見を、できるだけ早い段階で取り入れることが、落とし穴を避ける最も確実な方法です。
LYZONが大規模Webサイトリニューアルの相談先として選ばれる理由
LYZONは、国内最大手100社のうち20社以上との取引実績を持ち、190サイト以上の構築実績があります。約52,000ページ規模のCMS移行や、23か国18言語にわたるグローバルサイト構築など、数千〜数万ページ規模の大規模サイト構築を得意としています。
大企業向けCMS「Sitecore」では国内No.1クラスの構築・運用実績を持ち、Sitecore Practice Excellence Award 2024ではアジア地域No.1として受賞しました。要件定義の段階から参画し、CMSの導入設計・運用設計の両面を含めて伴走しています。広告代理店経由の案件は0件で、資本的にも独立した立場から、下請けではなく直接取引・対等なパートナーシップでご支援しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 一番最初に見直すべき落とし穴はどれですか?
スケジュール・予算感の見誤りです。「まずはPoCから始めたい」「CMS導入は半年程度」という前提を持ち込んでいないか、企画の初期段階で確認してください。CMS導入にはテンプレート設計・ワークフロー設計・権限設計など決めるべき事項が多く、この前提のズレがそのまま予算感のズレにつながります。
Q. CMSの選定はどのように進めればよいですか?
CMSというソフトウェア自体の選定で決まる要素は全体の3割程度で、残りの7割は導入設計と運用の質で決まるといわれています。同じ製品を選んでも、パーツ化・フィールド化の作り込みレベル次第で、現場の更新しやすさは大きく変わります。ソフトウェアの比較だけでなく、導入パートナーの設計力を確認してください。
Q. グループ会社を含むサイト統合はどこから着手すべきですか?
システム設計より先に、各拠点・グループ会社の責任者を集めて統合の意義を共通言語で説明する場を設けることです。特定の拠点・リージョンの発言力が強い場合、統合の意義が腹落ちしていないと「各拠点で個別にやってください」という結論に流れやすく、統合効果が半減します。
まとめ
大規模サイトのリニューアルで陥りやすい落とし穴は、スケジュール・評価軸・システム連携・合意形成・CMS構造・参考情報・投資配分・非機能要件という、企画段階のさまざまな判断に潜んでいます。いずれも「経験のなさ」と「情報の少なさ」に起因するものであり、事前にこれらのポイントを知っておくだけでも、多くのリスクを未然に防ぐことができます。