社内で安全にChatGPTを活用する方法
目次
はじめに
ChatGPTは、米OpenAI社の開発した自然言語処理を実行する大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)、チャットボット(Chatbot)ツールです。ビジネスにおいては、顧客対応やFAQの自動応答、文章の自動生成などに利用されます。しかし、情報漏洩や情報の正確性などの問題があることを認識し、安全にChatGPTを活用するためには次のような対策が必要です。
1.ChatGPT利用によるリスク
ChatGPTには脆弱性があります。ChatGPTなどのAI技術を社内で利用することにより、次のようなセキュリティリスクや会社の信用度に関わるリスクが生じる可能性があります。
(1)情報漏洩リスク
ChatGPTを用いたコミュニケーションやデータ処理の過程で、機密情報や個人情報が漏洩するリスクがあります。
特に、ChatGPTを用いた自動応答システムや、外部からの入力に基づいて自動生成された文章を公開する場合は、注意が必要です。
(2)不正利用リスク
ChatGPTを用いたシステムに不正アクセスされ、不正な活動が行われるリスクがあります。
例えば、ChatGPTを悪用した詐欺やスパム、個人情報の盗難などが考えられます。
(3)偽情報生成の可能性
ChatGPTは、大量のテキストから学習されたモデルであり、自然言語を生成するために使用されます。しかし、このモデルは偽の情報を生成することもできます。悪意のあるユーザーがこのモデルを使用して、偽の情報を生成しそれを広めることが可能になってしまいます。
(4)品質・信頼性リスク
ChatGPTは、機械学習に基づいたシステムであり、完全な自律的な動作が保証されているわけではありません。そのため、ChatGPTを用いたシステムが誤った応答をした場合、ユーザーの信頼性や会社の信用度が損なわれる可能性があります。
(5)プライバシーの侵害
ChatGPTは、大量のデータを必要とし、そのデータには個人情報も含まれる場合があります。モデルが学習した情報は、個人のプライバシーを侵害する可能性があります。
(6)サイバーセキュリティの脆弱性
ChatGPTは、機械学習アルゴリズムに基づいています。このため、攻撃者がモデルに対して有害な入力を与え、モデルを乗っ取る可能性があります。このような攻撃により、企業のネットワークや情報システムに対して深刻な被害が発生する可能性があります。
(7)バイアスの問題
ChatGPTは、学習データから学習するため、学習データに偏りがある場合、バイアス(偏見や偏り)の問題が発生する可能性があります。バイアスがあると、生成されたテキストにもそのバイアスが反映されるため、それがさらなる偏見を引き起こす可能性があります。
これらの問題を軽減するために、セキュリティの専門家やエンジニアがモデルを設計し、適切な監視、制御、管理する必要があります。また、適切なプライバシー保護措置も必要です。
2.AI利用に関する各分野でのガイドライン例
AIの利用に関して、各分野でガイドラインが策定されています。次に代表的なものを挙げます。
「関係府省庁のAI関連の指針・原則・ガイドラインの作成状況」(内閣府政策統括官)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000590652.pdf
(2020/12/24)
- 内閣府のまとめた、関係府省庁のAI関連の指針・原則・ガイドラインを俯瞰したもので、マトリックスにして示しています。
「AI開発ガイドライン及びAI利活用ガイドラインに関するレビュー」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000792234.pdf
(2022/02/08)
- 国内外におけるAI開発についての原則・指針・ガイドラインなどを比較しています。
「AI利活用ガイドライン」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000809595.pdf
(2019/08/09)
- AIネットワーク社会推進会議のまとめた、AI利活用のためのプラクティカルリファレンス(実践的参考資料)です。
「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20210709_6.pdf
(2021/07/09)
- AI原則の実践の在り方に関する検討会(旧 AI社会実装アーキテクチャー検討会)がまとめたガイドラインです。
「生成AIの利用ガイドライン」(一般社団法人日本ディープラーニング協会)
https://www.jdla.org/document/#ai-guideline
(2023/05/01)
- 民間企業や各種組織が生成AIを利用する場合に、組織内のガイドラインとして、最低限定めておいた方がよいと思われる事項を参考として示したものです。
これらのガイドラインでは、AIの利用において求められる倫理やルールがまとめられています。ビジネスにおいてChatGPTを活用する際にも、これらのガイドラインを参考にすることが重要です。国際的な比較もありますので、海外取引のある企業や団体にとっても有用です。
3.リスクの回避方法
前述のように、ChatGPTを利用することにはリスクが伴います。しかし、リスクを回避しつつChatGPTを活用する方法も存在します。
次に、その具体的な方法をいくつか紹介します。
(1)ChatGPT自体での履歴設定
ChatGPT自体での履歴設定によって、過去の対話内容が保存されます。このため、誤った情報が生成された場合でも、その原因を特定し対処できます。ただし、履歴情報が情報漏洩のリスクとなります。そのため、セキュリティ上の対策も必要です。
(2)セルフホスティング
ChatGPTをセルフホスティングによって、自社内でのみ利用できます。このため、外部からの攻撃や情報漏洩のリスクを大幅に軽減できます。ただし、セルフホスティングには運用面での負荷が増えます。
(3)Azure OpenAI Service ChatGPTの利用
Azure OpenAI Service ChatGPTを利用することで、Microsoftが提供するクラウド上のChatGPTを利用できます。これによって、セキュリティやプライバシーなどの面でのリスクを軽減しつつ、ChatGPTを活用できます。
ただし、利用料金が発生することに留意する必要があります。
以上が、ChatGPTを安全に活用するための具体的な方法です。また、リスクを回避することに加え、以下のようなポイントにも留意することが大切です。
(4)セキュリティ対策の徹底
社内ネットワークのセキュリティ対策を徹底し、不正アクセスやデータ漏洩を防止することが求められます。特に、ChatGPTを外部に公開する場合には、セキュリティ対策を十分に行い、アクセス制限をかけることが必要です。
また、ChatGPTにアクセスする端末やユーザーの認証にも注意が必要です。
(5)データの正確性を確保するための管理
ChatGPTによって生成された情報には、誤った情報や不適切な情報が含まれる可能性があります。そのため、生成された情報を確認する業務を徹底し、不適切な情報の修正や削除をしましょう。
ChatGPTによる生成テキストの正確性を担保するためには、学習データの品質管理や、生成テキストのチェック体制を整備することが重要です。
特に、ChatGPTをビジネスで利用する場合には、生成テキストが正確でなければ、重要な意思決定の根拠として利用できなくなります。
(6)リスク管理計画の策定
ChatGPTを利用する際には、リスク管理計画を策定することが必要です。
具体的には、リスクの特定、評価、対応策の策定、対応責任者の設定、スケジュールなどがあります。
以上のような方法を実施することで、ChatGPTの利用に伴うリスクを最小限に抑えられます。
まとめ
ChatGPTを安全に活用するためには、以下の3つのポイントに注意する必要があります。
- ChatGPT利用によるリスク認識
- AI利用に関する各分野でのガイドライン例の検討
- リスクの回避方法の考究
ビジネスにおいてChatGPTを活用することで、業務効率化や新たなビジネスモデルの構築が可能です。
ChatGPTの活用は顧客とのコミュニケーションの効率化やビジネスプロセスの改善などが期待できます。
けれども、情報漏洩や誤った情報の発信などのリスクもあることを認識する必要があります。そこで、セキュリティ対策や社員を教育することで、ChatGPTを安全かつ効果的に活用できます。
企業がChatGPTを活用するには、セキュリティ対策に特に注意する必要があります。リスクを最小限に抑えながらビジネスの成果を上げることが重要です。
信用と信頼を築くには長い道のりと時間がかかりますが、失うのは一瞬です。
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