アプリ・システム開発
企業規模別のIT活用のトレンドと最適なIT構成とは?
近年、ITツールやSaaSを活用することで、業務効率化やコスト削減を図る企業が増えています。しかし、企業の規模やニーズに応じて、導入すべきIT構成や対応方法には大きな違いがあります。
本記事では、企業規模ごとのIT活用の傾向をわかりやすく整理し、それぞれが抱える課題や成功のポイントについて詳しく解説します。自社に最適なIT構成を見極めるヒントとして、ぜひお役立てください。
企業規模別のIT活用の全体像と傾向
企業規模別のWebシステム
IT活用と一口に言っても、企業規模によって導入されるツールやシステムの構成は異なります。
中小企業の多くはSaaSやノーコード・ローコードツールを活用し、ITコストを抑えています。
一方、中堅企業以上になってくると、他社との競争優位性を作るために独自開発の比率が増加します。
大規模企業の場合
自社独自の業務プロセスやセキュリティ要件に対応するため、スクラッチでの独自開発が中心になります。
システムの独自開発はコストがかかりますが、SaaSとの連携や基幹システムとの統合も視野に入れると、トータルのコストは抑えられる場合も多いです。
中規模企業の場合
SaaS+独自開発のハイブリッド構成が多く、既存の業務フローとツールのギャップを埋めるために一部カスタマイズ開発を行う傾向があります。
小規模企業の場合
主にSaaSやパッケージ製品を活用し、低コスト・短期間で導入可能なノーコード・ローコードツールをそのまま導入する形が人気です。
大企業・中堅企業のWebシステム
ソリューション例
多くの大企業・中堅企業では、Webサイトや会員向けポータル、サポートサイトなどを既存の基幹システムや各種SaaSと連携させて運用しています。
その背景には、顧客へのサービス向上や業務効率化に加え、「複雑なIT環境をユーザーに意識させない体験設計」が求められるようになっているからです。
LYZONが提案する全体構成イメージ
LYZONが想定するシステム構成では、Webシステムを「UX/UI設計されたインターフェース層」とし、その下に基幹系・業務系のAPIやSaaSを支えるバックエンドが連携しています。
Web単体で閉じるのではなく、「社内外のサービス・業務とつながる仕組み」として構築されるのが、大企業・中堅企業のWebシステムの特徴です。
実現に向けた3つのポイント
このような複雑なシステム連携を成立させるには、単なるWeb制作スキルでは不十分です。
全体最適なアーキテクチャ設計と、バックエンド理解に基づく接続技術が必要になります。以下に、実現の際に特に重視すべき3つの観点を紹介します。
SaaSや基幹システムは柔軟性が低い
企業内で既に利用されているSaaSや基幹業務システムは、自由なカスタマイズができないケースも多く、Web側がそれに合わせて制約下でUIや動作を最適化する必要があります。
一方的に「理想のWeb体験」を追い求めても、現実の制約(仕様、セキュリティ、データ構造)に適応できなければ、実装は破綻します。
セキュリティやパフォーマンスに関する知見も不可欠
Webサイトは最終的に一般ユーザーや社外パートナーの入り口にもなります。
そのため、内部システムと連携している場合でも、Web側がボトルネックやセキュリティリスクを引き起こさない設計が求められます。
例:APIの負荷分散、認証情報の保持、外部公開と社内向けの分離など。
SaaSや業務システム側の仕様も踏まえた上で、セキュリティと性能要件のバランスをとる設計力が不可欠です。
SaaSを活用してお客様に新機能を迅速に提供
SaaSは柔軟性に限界はあるものの、スピーディな機能追加・改善が可能です。
例えばマーケティング支援、チャットボット、FAQ機能など、Webサイトにプラスαの体験を組み込むことで、「いつの間にか便利になっていた」という自然な顧客体験を届けることができます。
SaaS活用を前提にしたWebフロントの設計では、「API経由で柔軟に出し入れできる設計」が鍵となります。
中堅・中小企業のWebシステム
ソリューション例
中堅・中小企業では、業務効率化やコスト削減を目的に、kintoneやSalesforceなどのSaaS導入が進んでいます。
一方で、Webサイトやお客様向けのポータルとの連携については、「パッケージの制約に縛られて困っている」という声も多く聞かれます。
LYZONが提案する全体構成イメージ
このように、SaaSを活用しつつも、「見せ方」「まとめ方」「使いやすさ」をWeb側で最適化することで、顧客や社内ユーザーにとってスムーズな体験を実現しています。
よくある課題と解決のヒント
このような複雑なシステム連携を成立させるには、単なるWeb制作スキルでは不十分です。
全体最適なアーキテクチャ設計と、バックエンド理解に基づく接続技術が必要になります。以下に、実現の際に特に重視すべき3つの観点を紹介します。
SaaSやパッケージのWeb表示機能の限界
多くのSaaSは「業務効率化」に特化していて、Web上で魅力的な表示や柔軟なデザインの対応は苦手です。
例えば、一覧表示やマイページ機能などを「ちょうどいい形」に整えるには、Webシステム側の補完が必要です。
カスタマイズを希望すると、予想以上に高額な開発費がかかる
「SaaSをカスタマイズして、もう少しこうしたい!」と思っても、SaaS提供会社側に専門開発を依頼すると追加費用が非常に高くなることも少なくありません。
Web側でカスタマイズ対応できる部分を持たせることで、コストを抑えながら目的を実現するケースも増えています。
複数のSaaSから情報を集約して、お客様がアクセスしやすいサイト・システムに統合
よくあるのが「kintoneでA機能、SalesforceでB機能…」というふうにSaaSがバラバラに存在し、お客様が複数ログインする必要があるなど、使い勝手が悪くなるパターン。
Webフロント側で情報を一元表示したり、ログイン連携を整えることで、「お客様が意識せずに複数SaaSを使える状態」を実現できます。
SaaS同士の連携不足で、社内業務が分断される
SaaSは便利だけど、お互いの間でデータがつながらないケースも多く、担当者が毎回CSVで出力 → 手作業で入力…という非効率な運用が残っていることも。
この場合も、Webシステムが“つなぎ役”となることで、データ統合や自動化が進みます。
APIやバッチ処理を用いて裏側を整理すれば、業務効率は一気に向上します。
SaaSやパッケージの選定が難しい理由
IT活用の中心となりつつあるSaaSやパッケージですが、現在は非常に多くのサービスが市場に出回っており、「自社に合うツールの選定」が一層難しくなっています。
さらに、そのSaaSを「使いこなせるベンダーがいるかどうか」も重要な判断材料になります。単に導入するだけでなく、運用・カスタマイズ・保守を含めたトータルでの選定が求められます。
カテゴリ別主要パッケージツール一覧
以下は代表的なカテゴリごとのSaaS例です。
カテゴリ | 主なツール例 |
---|---|
CRM・SFA | Salesforce、MicrosoftDynamics365、GENIEE SFA/CRM |
会計経理 | 弥生会計、Money Forward、PCA、楽楽清算 |
勤怠・労務 | ジョブカン、SmartHR、HRBrain |
ローコード | kintone、JUST.DB、楽楽Framework3 |
業務管理 | Wrike、Asana、Backlog |
社内SNS | Slack、Microsoft Teams、Chatwork |
- どのカテゴリでも「柔軟性」「カスタマイズ性」「API連携の可否」が選定基準になります。
SaaSやパッケージの選定が難しい理由
現在、SaaSは業務カテゴリごとに無数の製品が存在し、「どれを選ぶべきか」「どう組み合わせるか」で多くの企業が以下の理由でつまずきやすくなっています。
1. 最適な組み合わせが難しい
SaaS単体ではなく、複数サービスを組み合わせる際に、相互連携やデータの一元管理がボトルネックになりやすいです。
2. ツール選定に規模感が重要
自社の規模や将来の成長に適したベンダー選定が必要不可欠。大企業向けツールを中小企業が導入しても、費用対効果が合わないこともあります。
3. IT人材の確保が困難
ノーコードの普及で誰でも簡単に使えるツールが増えた反面、本格的な業務フロー設計や連携開発を担える人材の不足も深刻です。
4. 情報と経験の差
SaaSの導入経験や知見の有無によって、導入プロジェクトの成功率に大きな差が出ます。
以上のように、SaaSやパッケージの選定は単なる「機能比較」だけではなく、業務・人材・体制・将来像を含めた総合判断が求められるのです。
まとめ
IT活用は規模と目的に応じた選定がカギ
SaaSやWebシステムの導入は、もはや「選べば終わり」ではありません。企業の業務内容・成長フェーズ・導入目的に応じて、最適な構成を見極める必要があります。
特に中堅・中小企業では、予算や人材リソースに制限がある中でも、将来を見据えた選定と拡張性の担保が成否を分けるポイントです。