要件定義
大規模リニューアルを担当者が最初に知っておくべき10個のポイント|着手前に押さえておきたいチェックリスト
大規模Webサイトのリニューアルを初めて担当する方は、次の10個のポイントを最初に押さえておくと、企画段階での手戻りを大きく減らせます。
数千〜数万ページ規模のコーポレートサイトのリニューアルは、多くの企業で10年に一度程度しか発生しません。そのため、社内に経験者がいないまま企画をスタートさせることになり、何から手をつければよいか分からない状態に陥りがちです。この記事では、実際の大規模案件で繰り返し起きているつまずきをもとに、着手前に知っておくべき10個のポイントを整理しました。
大規模リニューアルを担当者が最初に知っておくべき10個のポイント
数千〜数万ページ規模のコーポレートサイトのリニューアルは、多くの企業で10年に一度程度しか発生しません。この記事では、実際の大規模案件で繰り返し起きているつまずきをもとに、着手前に知っておくべき10個のポイントを整理しました。担当者お一人で抱え込む前に、まずはこのチェックリストで自社の状況を照らし合わせてみてください。
①社内に経験者がいなくて当たり前
大企業のCMS基盤は10年前後使われ続ける傾向があります。実際、大手企業の事例を見ても、13〜14年、あるいは10年前後にわたって同じ基盤を使い続けているケースは珍しくありません。この間には人事異動や組織変更が発生するのが通常であり、当時の担当者がすでに他部署へ異動している、あるいは退職しているケースがほとんどです。加えて、要件定義のような上流工程に実際に関与していたのは、担当部署の中でもごく少数のメンバーに限られていることが多く、たとえ長く同じ部署に在籍している人がいたとしても、前回の企画・要件定義の勘所まで把握しているとは限りません。
- Webサイトの日々の運用や更新には長く携わっていても、コーポレートサイト規模の全体リニューアルは未経験、という担当者は非常に多い
- 経験がないこと自体は特殊な状況ではなく、大規模サイトでは「経験者がいない方が普通」と捉えることが出発点になる
- 仮に前回リニューアルの経験者が残っていたとしても、次の②で述べる理由により、その知見がそのまま通用するとは限らない
②世の中の情報の多くは中堅・中小企業向け
Web検索で「サイトリニューアル 進め方」と調べても、上位に出てくる情報の多くは中堅・中小規模のサイトを前提にしています。そこに書かれていること自体は誤りではありませんが、数千〜数万ページ規模・複数部署・複数システムが絡む大規模サイト特有の論点(システム連携、グループガバナンス、アクセシビリティ対応など)は扱われていないことがほとんどです。
特に注意したいのは、自社の規模感に合わない情報を「これが標準的な進め方だ」と思い込んでしまうことです。中堅・中小企業向けの記事を読んで得た段取りやスケジュール感を、そのまま数万ページ規模のプロジェクトに当てはめると、後述するスケジュールの見誤り(⑧)につながりやすくなります。
③目的の明確化が何より優先される
リニューアルの目的が曖昧なまま進めると、後工程のあらゆる意思決定で判断基準がぶれてしまいます。「なぜリニューアルするのか」を最初に言語化することが、その後の全工程の土台になります。目的が固まっていないと、要件定義やベンダー選定の場面で「何ができますか」という手法論の議論から入ってしまい、そもそも何を実現したいのかが後回しになるという事態が起きがちです。
目的を明確にする際は、「デザインが古いから」「システムの保守期限(EOL)が切れるから」といった単純な理由だけで終わらせず、その背景にある事業上の変化(商品戦略の転換、ブランディングの見直し、組織再編など)まで掘り下げることが有効です。
④経営陣・関係部署との合意形成が不可欠
一担当者の判断だけでは、大規模リニューアルの実施を決定できないケースがほとんどです。プロジェクトの起点が「経営陣がリニューアルを判断し、トップダウンで降りてきたテーマ」なのか、「現場の担当者が必要性を感じ、経営陣を説得していく必要があるテーマ」なのかによって、進め方は大きく変わります。特にシステムのEOLのような技術的理由だけで説明すると、後ろ向きな企画に見えてしまい、予算確保のハードルが上がる点に注意が必要です。
合意形成を進める具体的な方法として、関係部署(広報・事業部門・情報システム部門など)の責任者クラスを集め、現状の課題と目指す姿を自分たちの言葉で語ってもらう場を設けることが有効です。
⑤要件定義は「更新性・拡張性・マーケティング機能・AI活用」の4視点で
大規模サイトは、更新性→拡張性→マーケティング機能→AI活用という順で求められる機能が高度化していく流れの中にあります。目先の課題だけでなく、この4つの視点で要件を整理しておくことが、将来の手戻りを防ぎます。
- 更新性:現場担当者がHTML/CSSの知識なしに更新・管理できるか
- 拡張性:将来のグローバル展開、マルチサイト運用、会員サイト化などに対応できるか
- マーケティング機能:MA連携、SFA/CRM連携、パーソナライズ、レコメンド機能など
- AI活用:コンテンツ生成・翻訳・ワークフロー自動化など、AIを前提とした運用効率化に対応できるか
これらに加えて、セキュリティ・ログ監視・パフォーマンス・可用性・アクセシビリティ対応(法令対応を含む)といった非機能要件も、企画段階で考慮しておく必要があります。
⑥認証基盤やシステム連携は「前回とは別物」と考える
10年前には存在しなかった要件に、前回リニューアル時に経験がある担当者でも初めて向き合うことになります。代表的なのが認証基盤と多言語翻訳の仕組みです。認証基盤はかつて主流だったオンプレミス型のディレクトリサービスから、クラウド型の認証基盤(Microsoft Entra ID、Oktaなど)へと標準が移り変わっています。多言語翻訳も、かつては原稿をExcel/Wordに書き出して翻訳会社に依頼する手作業が一般的でしたが、現在はシステム連携やAI翻訳の活用によって大幅に効率化されています。
また、会員サイトを伴う移行では、認証基盤の移行そのものが技術的な難所になります。会員のパスワードが暗号化されている場合、単純にデータをコピーすることはできず、復号する仕組みを用意するか、利用者に新しいID・パスワードを再設定してもらう仕組みが必要になります。
⑦「見た目」と「中身」は別の評価軸
デザインやユーザビリティといった「見た目(一見して整って見えるかどうか)」と、更新性・拡張性といった「中身(実際の運用のしやすさ)」は、必ずしも連動しません。デザインを磨き込んで一見して整った印象になったとしても、それだけでは運用担当者が日々使いこなせるCMSになっているとは限りません。要件定義の初期段階から、両方をバランスよく評価軸に含めておくことが重要です。
⑧スケジュール感の曖昧さは、そのまま予算感の曖昧さになる
日々のWebサイト更新やHTML/CSSの知識があっても、CMS導入の経験がないと、要件定義や実装にどれだけの期間が必要かを見誤りやすくなります。実際に「まずはPoC(概念実証)から始めたい」「CMS導入は半年程度で終わる」という前提でスケジュールを組んでしまい、後から見直しが必要になったケースもあります。スケジュール感が曖昧なまま進めてしまうと、その前提の上に組まれる予算感も的外れになりやすい、という点には注意が必要です。
⑨CMSの構造(ツリー型かリスト型か)を理解しておく
CMSには、コンテンツを階層構造で管理する「ツリー型」と、フラットなリストとして管理する「リスト型」があります。数千ページ規模のコンテンツを部署・カテゴリー横断で管理する大企業には、本来ツリー型の方が適しています。特にグループ会社や複数事業部でサイトを分けて管理したい場合、ツリー型のCMSはウェブサイト単位・部門単位で管理領域を分けやすく、テンプレートの一部だけを共有する(一箇所直せば関連ページに反映される)といった運用もしやすくなります。
⑩ベンダーには要件定義段階から伴走してもらう
CMSというソフトウェアの選定で決まる要素は全体の3割程度にすぎず、残りの7割は「どう設計して導入するか」、そしてそれ以上に「どう運用していくか」で決まるといわれています。ソフトウェアの機能比較だけに時間をかけすぎず、要件定義の初期段階からパートナーに伴走してもらうことで、抜け漏れのない要件整理と現実的なスケジュール設計がしやすくなります。
伴走してもらう際は、単にCMSの機能を説明してもらうだけでなく、①〜⑨で挙げたような論点(合意形成の進め方、4つの要件定義の視点、認証基盤移行の難易度、CMSの構造など)について、自社の状況に即した助言をもらえるかどうかを見極めることが、パートナー選びの実質的な基準になります。
LYZONが大規模Webサイトリニューアルの相談先として選ばれる理由
LYZONは、国内最大手100社のうち20社以上との取引実績を持ち、190サイト以上の構築実績があります。大企業向けCMS「Sitecore」では国内No.1クラスの構築・運用実績を持ち、Sitecore Practice Excellence Award 2024ではアジア地域No.1として受賞しました。要件定義の段階から参画し、上記10個のポイントを踏まえた設計をご支援します。広告代理店経由の案件は0件で、資本的にも独立した立場から、下請けではなく直接取引・対等なパートナーシップでご支援しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 10個のうち、最初に手をつけるべきものはどれですか?
③の「目的の明確化」です。目的が固まっていないと、要件定義やベンダー選定の場面で「何ができますか」という手法論の議論から入ってしまい、実現したいことが後回しになります。EOL対応など技術的理由だけを説明材料にすると、後ろ向きな企画に見えてしまう点にも注意が必要です。
Q. 社内に相談できる人がいない場合はどうすればよいですか?
大企業のCMS基盤は10〜14年前後使われ続ける傾向があり、前回のリニューアルを担当した人が社内に残っていないケースがほとんどです。⑩で挙げたように、ソフトウェアの説明だけでなく自社の状況に即した助言をもらえるかどうかを基準に、要件定義の早い段階からパートナーを選ぶとよいでしょう。
Q. 10個のポイントは、すべて同時に検討する必要がありますか?
同時にすべてを詰め切る必要はありません。まず①〜④で自社の状況と目的・合意形成の見通しを整理し、それを土台に⑤〜⑨の要件面の論点を詰めていくと進めやすくなります。⑩のベンダー選定は、要件がある程度固まってからではなく、①〜⑨の整理と並行して早い段階から相談を始めることをおすすめします。
まとめ
大規模Webサイトのリニューアルを初めて担当する方は、経験不足を前提に、目的の明確化・合意形成・要件定義の4視点・システム連携・評価軸・スケジュール感・CMSの構造・ベンダーとの関わり方という10個のポイントを最初に押さえておくことで、企画段階でのつまずきを大きく減らすことができます。