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Drupalのアップグレードは必要?リスクを回避し安全に移行するポイント

Webサイトの管理者や開発者にとって、Drupalのアップグレードは避けては通れない重要な作業です。セキュリティの維持から新機能の活用まで、アップグレードには多くのメリットがありますが、適切な知識と準備なしには大きなリスクを伴います。

本記事では、Drupalアップグレードの重要性からアップデートとの違い、アップグレード前の準備から具体的な流れ、失敗しないためのポイントやメンテナンスポイントまで、全てのDrupal管理者に役立つアップグレードの知識と実践的なテクニックを解説します。

危険度チェック!
Drupalアップグレードの重要性

Drupalのアップグレードを怠ると、いくつかの重大なリスクが発生します。ここでは、具体的なリスクとその影響について詳しく見ていきましょう。

1.セキュリティリスク

まず最も重大な問題として挙げられるのが、セキュリティ上の脆弱性です。古いバージョンのDrupalには、既に公開されている脆弱性が存在するため、そのままではハッカーの格好のターゲットとなってしまいます。
代表的な例として、2018年に発見された「Drupalgeddon2」(CVE-2018-7600)という脆弱性があります。この脆弱性は、ハッカーがサイトに管理者権限でアクセスできてしまう非常に危険なものでした。実際に影響を受けたサイトでは、サイトの改ざんや個人情報の流出、さらにはマルウェアの埋め込みやサーバーリソースの不正利用といった被害が多数報告されています。Drupalコミュニティは直ちに緊急セキュリティアップデートを提供しましたが、アップデートを行わなかったサイトの多くが攻撃の被害に遭う結果となりました。

2.パフォーマンスと機能の制限

次に考慮すべき問題は、パフォーマンスと機能の制限です。新しいバージョンのDrupalでは、サイトの性能を大きく向上させる改善が常に行われています。例えば、最新バージョンではページの読み込み速度が向上しているほか、モバイル対応機能の強化や管理画面の使いやすさの改善、APIのパフォーマンス向上など、多くの進化が遂げられています。

3. サポート終了による影響

さらに見過ごせないのが、サポート終了による影響です。Drupalの各バージョンには明確なサポート期限が設定されており、例えばDrupal 7のサポートは2025年1月5日に完全に終了しました。サポートが終了すると、セキュリティアップデートの提供が停止するだけでなく、コミュニティによるサポートも減少し、新機能の追加も行われなくなります。さらに、サードパーティの多くのモジュールでアップデートが停止する可能性があります。サポートの終了は、家のセキュリティシステムの保守契約が切れてしまうようなもので、問題が発生しても、公式のサポートを受けることができなくなってしまうのです。

これらのリスクを防ぐためには、定期的なアップグレードが必要不可欠です。
次の章では、Drupalのアップグレードの具体的な内容と、アップデートとの違いについて解説していきます。

アップグレードとアップデートの違いを知ろう

Drupalの更新には「アップグレード」と「アップデート」という2つの種類があります。一見似ているように思えますが、「アップグレード」と「アップデート」の違いを理解することは、適切な更新計画を立てる上で非常に重要です。

アップグレードとは

まずアップグレードについて見ていきましょう。アップグレードとは、Drupalの主要バージョン間の移行を指します。例えば、Drupal 8をインストールしてDrupal 8の環境で開発したサイトを、Drupal 9をインストールした環境に移行することがこれにあたります。
Drupalのアップグレードにかかる時間はサイトの規模や使用している機能によって異なりますが、一般的な中小規模サイトでは2〜4週間程度かかることが多く、大規模なサイトでは数ヶ月かかる場合もあります。
アップグレードでは、コアシステムの完全な更新が行われ、それに伴いデータベース構造の変更やテーマの互換性確認、モジュールの互換性確認、さらにはカスタムコードの修正が必要となります。

アップデートとは

一方、アップデートは比較的軽微な更新です。同じメジャーバージョン内での更新を指し、例えばDrupal 9.3から9.4への更新がこれにあたります。
所要時間は通常1〜2日程度で済み、主にセキュリティパッチの適用やバグ修正、小規模な機能追加、パフォーマンス改善などが含まれます。機能変更やコードの廃止による影響がある場合もあるため、事前の確認は必要です。
具体的な例を挙げると、Drupal 9.3から9.4へのアップデートでは、いくつかのセキュリティ修正の適用や管理画面の微細な改善、既知のバグの修正などが行われました。これらの更新は、サイトの基本的な構造を変更することなく、安全性と使いやすさを向上させるものです。

アップグレードとアップデートの比較

アップグレードとアップデートを比較すると、以下のようになります。

更新の種類 アップグレード アップデート
作業時間 2-4週間 1-2日
リスク
テスト必要性 全機能の徹底テスト 主要機能の動作確認
コスト
準備期間 1-2ヶ月 1週間程度

次の章では、これらの更新を安全に行うための計画と具体的なチェックポイントについて、さらに詳しく説明していきます。

事前準備と4つのチェックポイント

Drupalのアップグレードを成功させるためには、事前の準備が非常に重要です。

アップグレード前の準備

1.事前評価

アップグレードを成功させるためには、入念な準備が欠かせません。まず必要なのが事前評価です。現在のサイトの状態を詳しく確認し、使用中のモジュールの互換性をチェックし、カスタムコードへの影響を評価します。

2.リソース確保

次に、必要なリソースの確保も重要です。開発者の確保はもちろん、テスト環境の準備やバックアップシステムの確認なども必要となります。

3.スケジュール管理

さらに、適切なスケジュール管理も成功の鍵となります。ユーザーへの影響が最小となる時期を選び、十分なテスト期間を確保し、万が一の場合に備えたロールバック計画も策定しておく必要があるでしょう。

4つのチェックポイント

次に、特に注意を払うべき4つのポイントについて詳しく解説していきます。

1.互換性の確認

アップグレードにおいて最も重要なのが、現在使用している機能が新しいバージョンでも正しく動作するかどうかの確認です。特に気を付けたいのが、サイトに追加したカスタム機能(モジュール)やデザイン(テーマ)の互換性です。例えば、ECサイトで決済モジュールが新バージョンに対応していないことが原因で、アップグレード後に注文処理ができなくなるということも起こり得ます。このような事態を防ぐために、事前に各モジュールの開発元が公開している互換性情報を確認し、必要に応じて代替となる機能を検討することが重要です。

2.バックアップの重要性

スマートフォンの機種変更前にデータをバックアップするように、Drupalのアップグレードでもバックアップが欠かせません。具体的には、サイトのデータベースとファイル群の両方を保存する必要があります。特に注意したいのが、アップロードされた画像やドキュメントなどのメディアファイルです。これらは時として別のサーバーに保存されている場合があり、バックアップ漏れが起きやすい要素となっています。
サイトのデータベースやファイルを完全な形でバックアップしておくことで、万が一問題が起きても元の状態に戻すことができます。

3.テスト環境での実践

本番環境でいきなりアップグレードを行うことは、大きなリスクを伴います。そのため、本物のサイトとは別のテスト環境でアップグレードを試してみることが重要です。テスト環境では、本番環境と同じ条件を可能な限り再現することで、より正確な検証が可能になります。テストをすることで「この機能は新しいバージョンでは動かない」といった問題を事前に発見でき、対策を考えることができます。

4.公式情報の確認

Drupalが公開している公式ドキュメントやコミュニティの情報を確認することも、アップグレードを成功させるポイントです。公式ドキュメントには、最新のアップグレード手順や既知の問題点、その解決方法が詳しく記載されています。また、コミュニティフォーラムでは、実際のアップグレード経験や、トラブルへの対処方法が共有されており、これらの情報は貴重な参考資料となります。

これら4つのポイントをしっかりと確認することで、アップグレードを安全に進めることができます。次の章では、実際のアップグレード手順について、順を追って説明していきます。

Drupalアップグレードの流れ

Drupalのアップグレードは、計画的に進めることで、より安全に実施することができます。ここでは、アップグレードの具体的な手順を3つのステップに分けて詳しく説明していきます。

ステップ1:入念な準備

アップグレード作業の第一歩は、現在のサイトの状態を完全に保存する「バックアップ」から始めます。これは単なるファイルのコピーではなく、サイトの完全な「スナップショット」、つまり、フロントエンドの表示を制御しているプログラムや、バックエンドのデータベース(サイトの会員データベースや、コンテンツのデータなど)すべてのバックアップを作成する作業です。データベースには投稿されたコンテンツや設定情報が、ファイルシステムにはプログラムコードや画像などのメディアファイルが保存されています。これら全ての要素のバックアップを漏れなくとることが重要です。
また、現在使用している機能やデザインの互換性確認も、この段階で行います。例えば、カスタマイズした会員登録フォームが新バージョンでも正しく機能するか、独自に作成したデザインテーマが新環境で崩れないかなどを、詳細にチェックしていきます。もし互換性の問題が見つかった場合は、代替となる機能やデザインの検討を行います。

ステップ2:システム更新

準備が整ったら、いよいよDrupalの本体(コア)を新しいバージョンに更新します。この作業は、新しい家への引っ越しや大規模なリフォームのようなものです。Drupalの公式サイトから最新版を取得し、現在のファイルを適切に更新するとともに、データベースの移行やモジュールの調整などを行います。
特に重要なのが、データベースの更新作業です。これは、家具を新しい間取りに合わせて配置し直すようなもので、既存のデータを新しいバージョンの構造に適合させる作業です。この過程では、システムが自動的に必要な変更を行いますが、場合によっては手動での調整が必要になることもあります。

ステップ3:動作確認

最後に、サイト全体の動作確認を行います。この段階では、システムの基本機能から、カスタマイズした特殊な機能まで、全ての要素が正しく動作することを確認します。特に注意が必要なのは、ユーザー認証、フォーム送信、検索機能、メディアファイルの表示など、サイトの重要な機能です。この確認作業をしっかり行うことで、アップグレード後のトラブルを防ぐことができます。
また、サイトのパフォーマンスも重要なチェックポイントとなります。新バージョンでは表示速度が向上することが期待されますが、カスタマイズした機能によっては予期せぬ遅延が発生する可能性もあります。そのため、各ページの読み込み時間やサーバーの応答性能なども、詳細にチェックする必要があります。

これらの手順を慎重に進めることで、安全なアップグレードを実現することができます。次章では、アップグレードを成功に導くための具体的なルールについて、さらに詳しく説明していきます。

失敗しないアップグレード!3つのルール

アップグレード作業は慎重に進める必要がある重要な作業です。ここでは、数多くのアップグレード経験から得られた、成功への3つの重要なルールについて詳しく解説していきます。

1.まずは練習から始めよう

本番環境でいきなりアップグレードを実施することは、大きなリスクを伴います。新しい料理のレシピを試すときに、まず少量で試作するように、アップグレードも練習環境で十分に試してみることが重要です。テスト環境では、本番と同じような条件を可能な限り再現し、アップグレードによって発生する可能性のある問題を事前に把握することができます。
例えばテスト環境での実践により、カスタマイズした問い合わせフォームが新バージョンで正しく機能しないことが判明したとします。この発見により、本番環境でのアップグレード前に必要な修正を行うことができ、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。テスト環境での練習は、このような予期せぬ問題を事前に発見し、対策を講じる貴重な機会となります。

2.万全の準備を整える

アップグレードの成功は、その準備段階で大きく左右されます。特に重要なのが、サイトで使用している全ての機能(モジュール)とデザイン(テーマ)を最新の状態に更新することです。これは、引っ越し前に不要な物を整理するようなものです。古いバージョンのモジュールや、長期間更新されていないカスタム機能は、アップグレード後に問題を引き起こす可能性が高くなります。
セキュリティアップデートの適用も重要な準備作業の一つです。既知の脆弱性を修正しておくことで、アップグレード作業中のセキュリティリスクを最小限に抑えることができます。また、サイト独自のプログラム(カスタムコード)についても、新しいバージョンの仕様に合わせた見直しと必要な修正を行っておく必要があります。

3.確認作業を徹底する

アップグレードが完了した後の確認作業は、決して軽視できない重要なステップです。この段階では、サイトの見た目や操作性が正しく保たれているか、重要な機能が問題なく動作しているか、そして利用者が困らないように全ての機能が使えるかを、細かく確認していきます。
特に注意が必要なのは、日常的によく使用される機能です。例えば、ユーザーログイン、検索機能、フォーム送信、ファイルのアップロードなど、サイトの基本的な機能が正常に動作することを確実に確認する必要があります。また、サイト特有のカスタム機能についても、想定通りの動作をしているかを入念にチェックします。

これらのルールを守ることで、アップグレードの失敗を防ぎ、安全に作業を進めることができます。次の章では、Drupalを快適に使い続けるために必要な日々の管理について説明していきます。

快適なDrupalサイトを保つためのメンテナンスポイント

スマートフォンやパソコンと同じように、Drupalで作られたWebサイトも定期的なメンテナンスが欠かせません。ここでは、サイトを快適に保つための重要なポイントについて説明していきます。

1.安全性を常に意識する

セキュリティの維持は、Webサイト運営において最も重要な要素の一つです。スマートフォンのアプリを更新するように、Drupalの更新プログラムも定期的に適用する必要があります。これにより、新たに発見された脆弱性から自身のサイトを守ることができます。
また、定期的なセキュリティ監査も重要です。アクセスログの確認や、不審な活動の監視、セキュリティモジュールの設定見直しなど、包括的なセキュリティチェックを行うことで、潜在的な脅威を早期に発見し、対処することができます。

2.パフォーマンスの最適化

サイトの表示速度は、ユーザーエクスペリエンス(UX)に直接影響を与える重要な要素です。定期的なパフォーマンスチェックと最適化作業により、快適な閲覧環境を維持することができます。具体的には、キャッシュ設定の見直しやデータベースの最適化、使用していない機能やデザインの整理などが必要です。これは、部屋の掃除や整理整頓に似ています。
特に注意が必要なのが、データベースの肥大化です。時間とともに蓄積される不要なデータを定期的に整理することで、システムの応答性能を維持することができます。また、大きな画像ファイルの最適化や、効率的なプログラムコードの実装なども、パフォーマンス向上に効果的です。

3.使いやすさの向上

サイトの使いやすさは、定期的な見直しと改善が必要です。実際のユーザーからのフィードバックを集め、それを基に機能の改善や新機能の追加を検討していくことが重要です。例えば、よく使われる機能へのアクセスを簡単にしたり、分かりにくい操作手順を改善したりすることで、ユーザー満足度を高めることができます。

4.バックアップの習慣化

定期的なバックアップは、サイト運営における保険のようなものです。システムの不具合や人為的なミス、外部からの攻撃など、様々なリスクに備えるために欠かせません。特に、コンテンツの更新やシステムの変更を行う前には、必ずバックアップを取ることを習慣化することが重要です。
バックアップは単にデータを保存するだけでなく、定期的にその内容を確認し、必要な場合に確実に復元できることを確認しておく必要があります。これは、定期的な避難訓練のように、いざという時のための準備として重要な作業です。

これらのメンテナンスポイントを日々意識し、定期的なケアを行うことで、安全で快適なDrupalサイトを維持することができます。次は、これらのポイントを実践するための具体的な計画を立てていきましょう。

まとめ

Drupalのアップグレードはサイトの安定性とセキュリティを維持するために不可欠な作業です。リスクを最小限に抑え、スムーズな移行を実現するためには、事前の準備と計画が重要です。また定期的なメンテナンスとアップデートを行い、常に最新の状態を保つことで、Drupalを快適に利用し続けることができます。

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